トップ国際北米民主党の移民・人権政策にノー 共和党は信教の自由を重視

民主党の移民・人権政策にノー 共和党は信教の自由を重視

米大統領選結果を検証 GII・尾崎行雄記念財団

米大統領選の結果を総括するケント・ギルバート氏(左から2人目)ら =8日、東京都千代田区
米国大統領選挙では現状に不満を持つ国民の民意を受け、共和党候補のトランプ前大統領が再選した。政策提言専門集団のグローバル・イシューズ総合研究所(GII)と一般財団法人尾崎行雄記念財団は8日、都内で米大統領選を検証するシンポジウムを開催した。登壇した日米両国の専門家は、不法移民を野放しにし、行き過ぎた人権政策を取った民主党に国民はノーを突き付けたとの見方で一致した。(豊田剛、写真も)

「国境があること自体がおかしいのであって、誰がどこに住もうと自由であるべきだと言ってアメリカの国境を開いてしまった」。日本在住の弁護士ケント・ギルバート氏は、与党・民主党が敗北した最大の原因として、移民政策の失策を挙げた。民間調査会社ピューリサーチセンターの推計によると、2021年の米国における不法移民の数は1050万人だが、捕まっていない不法移民を含めれば2000万人にもなるとも言われている。

それ以外にも、米国にはエネルギー政策やインフレ、新規雇用の減少など問題が山積している上、諸外国との関係を懸念する向きもある。トランプ氏は中国だけでなく日本に対して関税を引き上げると明言しているが、ギルバート氏は日米間には自由貿易協定があり、「大きな影響はない」と指摘。トランプ氏はワンマンに見えるが、「他人のアドバイスはしっかり聞ける人物」と太鼓判を押した。

国民が失望したもう一つの要因として性の多様性の問題を挙げた。性的マイノリティ政策については、「LGBTのうちLGBまでは解決済みで、同性婚は保障されている」と強調。残るトランスジェンダーを巡っては、学校で女子生徒が男になりたいと言ったら親が知らないところで性転換手術の手配をされる現状を報告、直ちに是正されるべきと訴えた。

台湾在住の国際政治学者、ロバート・エルドリッヂ氏は、民主党に幻滅した一人だ。「民主党はいくら不正をしてもメディアや俳優・歌手を利用しても勝てなくなった」とし、トランプ大統領再選と上下両院での共和党の躍進を「当然の結果」と喜んだ。

「日本にとって重要なのは強い米国の復活。日本は強い米国の復活を支えるべきだ」と述べ、日米関係は日本次第であり、日本のやりたいことや要望を遠慮なく伝えることが重要だと主張した。

移民問題と経済の再建と並ぶ喫緊の課題は外交政策と指摘するエルドリッヂ氏は、①ウクライナ戦争停戦②イスラエル・ガザ問題解決・中東平和③台湾国家承認④北朝鮮問題――の順に着手すべきだと提言した。

「もしかしたら米国の癒しの選挙だったのかもしれない」。GII代表の吉川圭一氏の率直な感想だ。トランスジェンダー人権、自虐史観、移民受け入れなど「嫌なものは嫌とはっきりしたことは良かった」と感想を述べた。その上で、米国の人口は近い将来、「白人が過半数を割ることになるが、米国の建国の理念を尊重する国であり続けられるのか」に着目した。

日本に対しては在日米軍の駐留経費負担の増額、台湾に対しては「米国から半導体産業を奪った」などと主張するなど、トランプ氏を巡っては過激な発言が注目される。これについて吉川氏は、むしろ「米国がきついことを言って突き放したほうが、日本が独立心を取り戻せる」と期待を寄せた。

トランプ氏の勝因の一つに「宗教」を挙げたのは、国際政治と宗教の関係が専門の日本大学国際関係学部教授、松本佐保氏だ。今回の選挙では、カトリック信者が多いヒスパニック系の多くがトランプ氏支持に回ったという。少数派や弱者にやさしいとされた民主党の支持基盤だったが、バイデン政権が不法移民を許した上、性的少数派に対して行き過ぎた配慮をしたことが影響したとの見方を示した。

また、伝統的に共和党を支持するプロテスタント非主流派の福音派は熱狂的にイスラエル支持で、中東問題がどう転ぶかは予想が難しい。松本氏は「トランプ氏と関係がいいイスラエルのネタニヤフ首相が(説得されて)攻撃を緩め、和平交渉に持ち込む可能性がある」と指摘した。

「共和党は宗教の自由を重んじる政党であり、中国の宗教弾圧に厳しい。弾圧されている人々のために代弁してくれる」。こう述べた松本氏は、米国で再び宗教について議論されることに期待を示した。

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