5日投開票の米大統領選は、結果判明に数日を要するほどの接戦になる可能性も指摘されていたが、共和党のトランプ前大統領が激戦州を次々に制し、一気に勝負を決めた。トランプ氏の「圧勝」と言っていいだろう。
この結果をもたらしたものは何か。要因はさまざまあるが、日本の大手メディアが決して報じないのは、左翼イデオロギーを押し付け、国民生活を脅かすバイデン政権やリベラルなエリート層に対する一般庶民の「怒り」である。
バイデン政権の4年間で記録的な数の不法移民が流入した。それを許したのは、国家の概念や国境を時代遅れのものと見なすグローバリズムだ。米国民が物価高に苦しむ中、政府が多額の税金を投じて不法移民に衣食住を提供し、また各地で不法移民による犯罪が多発していることに、庶民が強烈な不満を抱かないはずがない。
またバイデン政権が支持する過激なジェンダーイデオロギーも庶民の反感を招いた。トランスジェンダー選手が性自認に基づいて女子スポーツに出場することを認める近年の風潮は、女子選手や娘を持つ父兄には到底理解できるものではないからだ。
「コモンセンス(常識)を取り戻す」。選挙戦で繰り返しこう主張したトランプ氏に圧倒的な支持が集まったのは、行き過ぎたLGBT政策をはじめ、庶民感覚と乖離(かいり)した左翼イデオロギーに対するバックラッシュ(反動)が起きている証左といえるだろう。
トランプ氏の当選は、米国内のみならず世界的にも保守主義運動を勢いづけると予想される。既にイタリアやアルゼンチンなどで明確な保守哲学を持った政治指導者が誕生しているほか、リベラル色の強いフランスやドイツでも保守勢力が台頭している。この潮流がさらに加速する可能性が高い。
翻ってわが国はどうか。欧米諸国が過度の移民の受け入れや過激なLGBT政策の弊害を直視し、見直しを模索する中、日本は周回遅れで採り入れているのが実情だ。トランプ政権の復活は、わが国も世界の潮流に呼応する形で左翼イデオロギーを押し返す絶好のチャンスが到来したとみるべきである。
誰が首相であってもトランプ氏と良好な関係を築くのは容易ではなく、日米同盟に波風が生じる局面も予想される。ただ、トランプ氏が掲げる「米国第一」を孤立主義と短絡的に捉えるべきではない。政府が自国民の利益を守ることを最優先するのは当たり前のことであり、国家のあるべき行動原理を再確認したにすぎない。
日本国民も政治指導者に自国民を第一に考え、日本の文化・伝統や社会の調和を守ってほしいと願っている。トランプ氏が巻き起こす保守主義の潮流にわが国も乗り遅れてはならない。