【ワシントン山崎洋介】トランプ前米大統領は16日、南部フロリダ州での2度目の暗殺未遂事件について、容疑者が「バイデン(大統領)とハリス(副大統領)の言説を信じ、それに従って行動した」と非難し、自身に対する行き過ぎた批判が、事件につながったとの認識を示した。容疑者は約12時間、現場付近で待ち伏せしていた可能性が判明しており、警備体制への懸念も広がっている。
民主党側はこれまでトランプ氏について「民主主義の敵」などと批判してきた。ハリス候補自身、4月にSNSへの投稿で、トランプ氏が「民主主義や基本的自由に対する脅威」だと書き込んでいた。
トランプ氏は16日にFOXテレビのインタビューで「私は国を救おうとしており、彼らこそが国を破壊しようとしている。しかし、彼らのレトリックのせいで、私には銃口が向けられている」と強調。自身に対する行き過ぎた批判が事件につながったと訴えた。
トランプ氏は7月にも暗殺未遂に遭い、右耳を負傷。当時、バイデン大統領は国民向けの演説で「政治的レトリックが過熱している」として国民に団結を呼び掛けた。しかしその後、融和ムードはすぐに消え去り、8月の民主党全国大会では、トランプ氏を危険視する言説が連日、繰り返された。
15日に拘束されたライアン・ラウス容疑者(58)の動機は、まだ明らかになっていない。ただ、トランプ氏は「民主主義の脅威」であり、再び大統領になれば独裁者として振る舞うだろう、などと民主党側と同様の主張をSNS上で発信していたことが分かっている。
一方、連邦捜査局(FBI)は16日、ラウス容疑者を銃の不法保持の疑いで訴追した。
事件は15日午後1時半にトランプ氏が所有するゴルフ場で起きたが、携帯電話の位置情報によって、同日午前2時ごろからゴルフ場にいたことが確認された。それから半日近く、待ち伏せしていたことになる。
バイデン大統領はホワイトハウスで記者団に「シークレットサービス(大統領警護隊)にはさらなる支援が必要だ」として、議会に人員増などの対応を求めた。トランプ氏も警護員が「素晴らしい仕事をした」と評価しつつも、「もっと人員が必要だ」と述べ、警護の強化を求めた。