【ワシントン山崎洋介】米民主党のハリス副大統領(59)と共和党のトランプ前大統領(78)による初の大統領選テレビ討論会が10日、東部ペンシルベニア州で行われた。討論は1時間45分にわたって行われ、経済、人工妊娠中絶、移民、国際情勢の各分野に及んだ。終了後の緊急世論調査からは、ハリス氏が優勢か、との結果が得られた。
討論ではハリス氏が、トランプ氏を挑発するような発言も目立った。2020年大統領選で再選に臨んだトランプ氏は「(バイデン氏に投票した)8100万人から解雇された」と述べたり、トランプ氏の集会に参加した人々が「退屈して集会を早めに去っている」と揶揄(やゆ)したりした。
これにトランプ氏は、われわれが行っている集会は「米政治史上、最大だ」などと切り返した。ただ、反論に必死になるあまり、ハリス氏の政策に対する追及が不十分になったとの指摘もあった。
ハリス氏は、必ずしも質問に正面から答えず、政策についてはあいまいな発言が目立った。司会者から、かつて掲げていた左派的な政策を転換させたことについて問われたが、明確な回答は避け、「私の価値観は変わっていない」などと濁した。
またトランプ氏は、現在、政権支持率の低いバイデン大統領と結び付け、「バイデンと同じだ。最悪のインフレのせいでひどい経済だ。彼女はこの問題から逃げられない」とハリス氏を追及。これに対しハリス氏は、「私はジョー・バイデンではない。これからわが国の新しい世代のリーダーになる」と反論した。
ハリス氏は、ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、トランプ氏が大統領になれば、ロシアのプーチン氏に譲歩すると強調。「(侵攻時に)トランプ大統領だったら、今ごろプーチン氏はキーウ(ウクライナの首都)にいるだろう」とした。これに対してトランプ氏は、自らが大統領であれば、プーチン氏がモスクワに留(とど)まった上で「戦争で30万人の男女を失うこともなかった」とし、ウクライナ侵攻自体を阻止できたと訴えた。
討論会はABCテレビが主催。司会者がトランプ氏の発言が事実でないと指摘する場面が何度かあった。ハリス氏に対しては、こうした対応を取らなかったことから、討論会後にトランプ氏は記者団に、「司会が明らかに不公平だった」と不満を述べた。
終了後にCNNテレビが実施した調査では、討論会の勝者について63%がハリス氏と回答。トランプ氏は37%にとどまった。一方、経済政策に関しては、55%がトランプ氏の方が能力があるとし、35%のハリス氏を上回った。なお、82%は今回の討論会が投票行動に影響を与えないとしている。