日本の防衛費増は不十分
トランプ前米政権で国防副次官補を務めたエルブリッジ・コルビー氏は、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーでこのほど開催された共和党全国大会で世界日報のインタビューに応じた。コルビー氏はトランプ政権が復活した場合、日本はウクライナ戦争よりも中国への対応を優先して自主防衛力の増強が求められると予想。日本の防衛費増額のペースは不十分であり、国内総生産(GDP)比2%ではなく3%を目指すべきだと主張した。発言内容は以下の通り。(聞き手=本紙主幹・早川俊行)
私はトランプ陣営を代弁しているわけではないが、彼らの立場を反映した共和党綱領は「力を通じた平和」を掲げ、強力な同盟関係を求める一方、軍事力は慎重に行使し、コモンセンス(常識)に基づくアプローチを重視している。トランプ前大統領と副大統領候補のJ・D・バンス上院議員が孤立主義者だという指摘は正しくない。
共和党綱領が欧州や日本に送った明確なメッセージは、同盟国は自国の安全保障により大きな責任を負うことに集中すべきだということだ。日本政府はルールに基づく国際秩序を重視し、米国に対し欧州に集中するよう求めている。岸田首相が米議会演説でアジアではなく欧州に焦点を当てた追加予算の可決を訴えたことは、個人的に非常に驚いた。
対中国でGDP比3%を
日本が軍事力増強に取り組んでいることは重要だが、もっと大規模かつ迅速に進める必要がある。防衛費を2027年度までに国内総生産(GDP)比で2%に増やすというのは明らかに不十分であり、円安を考えればなおさらだ。
韓国の防衛費はGDP比2.7~2.8%で、インドも防衛に極めて真剣だ。日本は正しい方向に進んでいるものの、あまりにも遅く、規模も小さ過ぎる。このような緩やかな対応では、日本は本当に中国の脅威に真剣なのかと思わざるを得ない。
バンス氏は今年2月のミュンヘン安全保障会議で欧州諸国に目を覚ませと訴えた。同盟国はもっと努力すべきだというのがトランプ陣営の明確なメッセージだ。
バイデン政権もウクライナへのコミットメントを約束しているが、国防予算は横ばいか減少傾向にあり、防衛産業はひどい状態だ。一方で、読売新聞の報道によると、岸田首相に報告された日本政府の分析では、中国軍は1週間で台湾を侵攻する準備が整う可能性があるという。
これは緊急事態だ。日米のレトリックと現実の間には巨大なギャップがある。われわれが約束していること、必要と言っていることと、実際に行っていることの間には大きな隔たりがある。このギャップを埋める必要がある。日米はあまりに自己満足的だ。
もっと現実的になる必要がある。バンス氏がミュンヘンで主張したように、米国はアジアという優先地域に焦点を当てるべきだ。そして、共和党綱領にあるように、米国の産業を強化することで、軍事力を高め、同盟国の防衛力を支援する必要がある。
日本はその重要な一翼を担っている。日本はGDP比3%の防衛費が必要だと思う。ロシアと対峙(たいじ)する欧州が2%では不十分なレベルだからだ。中国はロシアの10倍の経済規模がある。
日本はもっと危機感を持つべきだ。私は日本に自国の防衛に集中することを強く求める。地球の反対側(欧州)に限られたリソースを使ってはならない。