トップ国際北米【連載】トランプ2.0へ本格始動―総括・米共和党大会(上) 「多人種大衆政党」に変貌

【連載】トランプ2.0へ本格始動―総括・米共和党大会(上) 「多人種大衆政党」に変貌

黒人らの民主党支持切り崩す

16日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党大会で記念撮影する黒人と白人の女性(桑原孝仁撮影)
16日、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党大会で記念撮影する黒人と白人の女性(桑原孝仁撮影)

11月の米大統領選に向け、トランプ前大統領を大統領候補に正式指名した共和党。15~18日に開催された共和党全国大会を総括しながら、「第2次トランプ政権」の実現へ本格始動した同党の今後を展望する。(米ウィスコンシン州ミルウォーキー早川俊行)

筆者が共和党大会を現地取材したのは今回が3回目で、2008年が最初だった。当時はマケイン上院議員が大統領候補で、会場は白人エリート層の社交クラブのような雰囲気だった。対する民主党は黒人初の大統領を目指すオバマ氏が候補ということもあり、活気に溢(あふ)れていた。

それから16年。共和党はトランプ氏の下で様変わりした。一般庶民から幅広い支持を集める「多人種大衆政党」へと生まれ変わりつつあるのだ。党大会会場の屋内スタジアムに響き渡った熱狂的な歓声とはち切れんばかりのエネルギーがそれをはっきり表していた。

大会参加者は圧倒的に白人が多かった。それでも世論調査では黒人や中南米系の間でトランプ氏の支持率が大きく伸びている。マイノリティー有権者はこれまで民主党の強固な支持層だったが、この構図が崩れ始めているのだ。

党大会会場で黒人と中南米系の参加者数人に話を聞いたが、全員がトランプ氏の影響を受けて民主党支持から共和党支持に転向したと口を揃(そろ)えた。

「家族全員が民主党員で、私もそのように育てられた。民主党に投票しなければ黒人ではないとも言われた。だが、今は黒人の間でトランプ支持が急速に広がっている」。刑事司法改革に取り組む黒人女性活動家のアリス・マリー・ジョンソンさん(69)はこう語った。

トランプ氏に触発され起業家となったカンザス州の黒人男性ジェネラル・ジェラルド・メイズさん(49)も、「若い頃、共和党について間違って教えられた。だが、家庭と神を何より大切にする保守的な黒人社会を代弁するのは共和党だと分かった」と述べた。

メイズさんが言うように、黒人や中南米系はもともと保守的な価値観を持つ。だが、民主党は行き過ぎたトランスジェンダー政策など左派イデオロギーに傾斜することで、彼らを遠ざけてしまっている。

テキサス州上院選に立候補している中南米系女性のマーサ・フィエロさん(52)は、「LGBTイデオロギーは中南米系にとって最悪だ。彼らは家庭を破壊している」と憤慨した。

マイノリティーの中でも黒人は何があっても離れない民主党の岩盤支持層と言われてきた。ところが、ジョンソンさんによると、黒人が民主党から大量に離脱する、いわゆる「ブラック・エグジット」と呼ばれる現象が「現実に起きている」というのだ。大統領選で黒人票が数パーセントでも民主党から共和党に移れば、接戦州の行方を左右する可能性がある。

共和党は15日に採択した綱領で「コモンセンス(常識)への回帰」を掲げた。これは庶民感覚から乖離(かいり)した民主党に対する当て付けであり、マイノリティー有権者の共感を得られるメッセージといえる。

米人口に占める白人の割合が年々低下する中、共和党は「裕福な白人政党」のイメージのままでは未来がないことは明らかだった。だが、トランプ氏が民主党の支持基盤である労働者階級やマイノリティーを切り崩したことで、こうした悲観論は消えつつある。

トランプ氏に懐疑的だった党の有力者たちも全面的に支持するようになったのは、同氏が党内に明るい未来を示したからに他ならない。11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば、共和党は「多人種大衆政党」の地位を固めることになるだろう。

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