銃撃事件で求心力高まる
【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)早川俊行】米共和党全国大会は18日、トランプ前大統領の候補指名受諾演説が熱狂的な盛り上がりを見せて閉幕したが、ほとんどの党員はこれを「奇跡」と捉えているだろう。13日にペンシルベニア州でトランプ氏を襲った銃弾がもう数センチずれて頭部を貫いていたら、党大会は中止か大規模な葬式となっていたからだ。
「至るところに血が流れていた。だが、ある意味、とても安心だった。神がついていたからだ」。トランプ氏は演説の冒頭、銃撃事件をこう振り返った。4日間にわたる党大会では、多くの党有力者からトランプ氏を守ってくれた神に感謝する発言が相次いだが、全米の党員に共通する思いに違いない。
トランプ氏が初めて共和党の大統領候補指名を獲得したのは2016年。この時の党大会は、同氏の特異なキャラクターやポピュリズム色の強い主張に強い反発があり、結束には程遠かった。
それから8年。ペンス前副大統領の姿はなかったものの、トランプ氏の掲げる「米国第一」は党内で幅広い支持を集め、かつてないほど一体感に満ちた大会となった。トランプ氏が銃撃事件から生き延びたというドラマも、求心力を劇的に高める結果となった。
今回の党大会で会場のモニターに何度も映しだされたのが、トランプ氏が銃撃を受けた直後に聴衆に向かって拳を突き上げた場面だ。この時の行動について、トランプ氏は「無事であることを聴衆に知らせるために何かしたかった」と語った。
巨大な星条旗がなびく前で血を流しながら聴衆を鼓舞した瞬間は、共和党で永遠に語り継がれる伝説となった。共和党は完全に「トランプ党」になったと言っていいだろう。