【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)早川俊行】米共和党全国大会は2日目の16日、「米国を再び安全に」をテーマに国家安全保障問題に焦点を当て、特に不法移民の急増を許したバイデン政権への厳しい批判を繰り広げた。不法移民問題はバイデン政権にとって経済・インフレ問題とともに最大のアキレス腱であり、共和党は主要争点に位置付けて失政を追及する構えだ。
「米国は不法移民に侵略されている」――。共和党の有力者らはこうした強烈な表現を用いてバイデン政権を非難した。正確な数は不明だが、大会ではバイデン政権の3年半で不法入国者は1000万人を超えるとの見方も出され、まさしく空前絶後の国境危機と言っていい。
大会では、エルサルバドル出身の不法移民にレイプ・殺害された女性の遺族が演説。不法移民の大量流入により治安が脅かされている実態を生々しく語った。
また、国境危機は合成麻薬「フェンタニル」の流入も招き、多くの国民を中毒死させている。フェンタニルによって息子を失った母親も演説し、批判の矛先をバイデン政権だけでなく、フェンタニルの原料をメキシコの麻薬カルテルに輸出している中国にも向け、「中国共産党が子供たちを汚染している」と訴えた。
共和党は不法移民に厳しい姿勢を示すものの、合法的な移民の受け入れに反対しているわけではない。大会では上院選の共和党候補たちが演説したが、オハイオ州のバーニー・モレノ候補はコロンビア出身、バージニア州のホン・キャオ候補は元ベトナム難民だ。共和党はトランプ氏の下で外国人に対し排他的になっていると批判されることが多いが、不法移民が米国の法秩序を無視していることに怒りを募らせているのが実情だ。
共和党は15日に採択した綱領で、不法移民に対し「米史上最大の強制送還」を行うと明記。トランプ氏は常々、「国境のない国家は国家ではない」と主張しており、不法移民の大量流入は治安にとどまらず、国家アイデンティティーに直結する問題と捉えている。