
【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)山崎洋介】バイデン米大統領は14日、トランプ前大統領の銃撃事件を受け、ホワイトハウスの大統領執務室から国民に向けた演説を行い、「米国では銃弾ではなく、投票箱で相違を解決」するべきだと強調し、国民に対して「われわれは団結しなければならない」と呼び掛けた。
大統領による執務室からの演説は、国民にとって重要な問題について述べる場合に実施され、バイデン氏は今回が3回目。同氏は演説で、銃撃事件について、「われわれ全員に一度立ち止まることを要求している」と指摘。「この国の政治的レトリックは非常に過熱している。今こそ冷静になる時だ」と訴えた。
また「米国の民主主義において意見の相違は避けられない」 としつつ、「それは政治は決して文字通りの戦場であってはならない」とも述べた。
米メディアによると、バイデン氏陣営は、事件を受け、トランプ氏を攻撃する選挙広告を一時的に停止している。保守派からは、バイデン氏らが、トランプ氏の存在を「民主主義の脅威」であると主張するなど、行き過ぎたトランプ批判を行ったことが、事件につながったと指摘されているが、バイデン氏は演説で、それについて言及しなかった。
連邦捜査局(FBI)は14日夜の声明で、事件について、暗殺未遂事件と国内テロの可能性として捜査していると発表。その場で警護官に射殺されたトーマス・マシュー・クルックス容疑者(20)については、単独犯であることを示しているが、共謀者がいた可能性について判断するため、捜査活動を続けるとした。
バイデン氏は演説で、「狙撃犯の動機はまだ分からない。 彼の意見や所属も分からない」と述べた上で、法執行機関が捜査を続けるとした。
一方、トランプ氏は14日、翌日に共和党全国大会が開幕するミルウォーキーに到着した。トランプ氏は自身のSNSで「昨日の恐ろしい出来事を受けて、私はウィスコンシン州への訪問と共和党全国大会を2日遅らせるつもりだったが、銃撃犯、つまり暗殺未遂者がスケジュールの変更を強制するのを許すことはできないと判断した」と犯人に屈しない姿勢を強調した。
トランプ氏は、保守系メディア「ワシントン・エグザミナー」によるインタビューで、銃撃事件を受け18日の指名受諾演説の原稿を大幅に書き直し、国民の団結を呼び掛ける内容に変えたと述べた。トランプ氏は同メディアに「演説は2日前とはかなり違うものになるだろう。米国を一つにするチャンスだ」と語った。