
【ワシントン早川俊行】米東部ペンシルベニア州で13日にトランプ前大統領を襲った暗殺未遂事件は、起きるべくして起きたと言えるかもしれない。犯人の動機はまだ明らかになっていないが、トランプ氏を「民主主義の脅威」と一方的に断じて憎悪をあおる与党民主党の敵対的なレトリックやこれを許容する政治やメディアの風潮が暴力につながった可能性は否定できない。
トランプ氏はこれまで四つの刑事事件、計91の罪で訴追されたが、これを行ったのはバイデン政権が任命した特別検察官と民主党の2人の地方検事長だ。大統領経験者に対する刑事訴追は初めてであり、トランプ氏の返り咲きを阻止するためなら「何をしても構わない」という危険な風潮を蔓延(まんえん)させたことは否めない。
このため、本紙は今年3月11日付で「懸念されるのは『何でもあり』が暴力にまで行き着くことだ」と警告。ジェイソン・モーガン麗澤大学准教授も、本紙に「次に考えられるのは、暗殺という最終手段だ。暗殺リスクは決して低くない」と指摘していた。
暗殺未遂事件を受け、トランプ前政権で司法長官を務めたウィリアム・バー氏は「民主党はトランプ氏が民主主義にとって存亡の危機であるというひどく無責任な主張をやめなければならない。彼はそうではない」と訴えた。今回の事件は、民主主義を守ることを名分とした行き過ぎた「トランプ叩き」が逆に民主主義を破壊する恐れがあることを浮き彫りにした。