バイデン氏の高齢不安「隠蔽」か 左派メディアに批判

先月下旬の米大統領選テレビ討論会後、バイデン大統領(81)の高齢不安があらわになる中、米メディアのこれまでの報道姿勢も問われている。トランプ前大統領(78)への反発心が強いリベラルメディアが、バイデン氏の認知機能低下について気付いていながらその「隠蔽(いんぺい)」に加担してきた可能性が指摘されている。(ワシントン山崎洋介)
6月27日、米南部ジョージア州アトランタで行われたトランプ前大統領との大統領選討論会の休憩中に壇上に立つバイデン大統領(UPI)
6月27日、米南部ジョージア州アトランタで行われたトランプ前大統領との大統領選討論会の休憩中に壇上に立つバイデン大統領(UPI)

バイデン氏はテレビ討論会でたびたび言葉に詰まったり、支離滅裂な話をするなど、認知機能の低下をうかがわせた。米メディアは驚きを持ってこれを報じ、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとしたメディアから、同氏の大統領選からの撤退を求める主張が相次いでいる。

しかし、バイデン氏の認知機能が低下しているとの疑いは、失言や物忘れ、言い間違いが著しいことから、すでに2020年大統領選の時に浮上しており、その後も保守系メディアはこの問題をたびたび取り上げてきた。また、今年2月には、ロバート・ハー特別検察官が報告書で「バイデン氏の記憶は、著しく制限されていた」と指摘していた。

しかし、大手リベラル系メディアは、この問題を積極的に取り上げないか、もしくは否定的な見方を示してきた。討論会を目前に控えた先月中旬には、保守系メディアや共和党全国委員会がソーシャルメディアにバイデン氏の認知機能低下を示唆する動画を公開したが、リベラル系メディアはこれを批判した。

その中でも注目を集めたのが、イタリアで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)の際の映像だ。これには、バイデン氏が首脳陣のグループから離れ、ふらふらと歩み去って行くのを、ホスト役であるメローニ首相が引き留める様子が映されている。

保守系のニューヨーク・ポスト紙は、この映像についての記事をX(旧ツイッター)に投稿した際に、動画の一部を不適切に切り取ったとされた。

ニューヨーク・タイムズ紙は先月21日の記事で、バイデン氏はその時、降下を終えたばかりの空挺(くうてい)部隊に話し掛けていたが、ニューヨーク・ポスト紙が投稿した動画にはその部分が含まれていなかったと指摘。「バイデン氏の公的な場での振る舞いから意図的に切り取られた断片が、高齢不安をあおり、ソーシャルメディア上で陰謀論が渦巻いている」と非難していた。またCNNやNBCニュースなども、同紙の動画を「欺瞞(ぎまん)的」だとして批判した。

ところが、討論会後の今月2日にニューヨーク・タイムズ紙が掲載した記事では、立場を一変させ、G7の時の映像をバイデン氏の懸念すべき状況を示す一例として挙げた。その中で「ある時、バイデン氏は空挺部隊と話すために首脳陣のグループからふらふらと離れたように見えた。そして、イタリアのジョルジャ・メローニ首相が後ろから近づき、そっと連れ戻した」と記述。バイデン氏はメローニ氏による「誘導が必要」だったとも指摘した。

保守派の間では、こうしたリベラルメディアが政治的動機のため、バイデン氏の抱える問題について「隠蔽」を図ったとの見方が広がっている。20年大統領選でトランプ選対報道官を務めたティム・マートー氏は、ワシントン・タイムズ紙に「メディアはトランプ氏を憎んでいるが故に、バイデン氏の認知機能低下を隠蔽した」と題するコラムを掲載。討論会後、リベラル・メディアはバイデン氏の認知機能低下についてもはや隠すことができなくなったため、同氏への追及を始めたと指摘した。

リベラル派からも批判の声は上がっている。ニューヨーク・タイムズの元編集長ジル・エイブラムソン氏は、ネットメディア「セマフォー」で、「バイデン・ホワイトハウスは、大統領の衰えと深刻な体力の低下の程度を、大々的に隠蔽することに成功した」と指摘した上で、ホワイトハウス記者団に対しては、「大統領を取り巻く秘密のベールを突き破らなかったことを恥じるべきだ」と批判した。

さらに「ドナルド・トランプ氏の当選に手を貸したと非難されたくなかったので、あまりにも多くのジャーナリストが取り上げようとしなかったのではないかと懸念している」とその反トランプ姿勢が真実の追究の妨げとなった可能性を指摘した。

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