【ワシントン山崎洋介】米国務省は26日、各国の信教の自由に関する2023年版年次報告書を公表した。報告書は日本に関して、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する政府の解散命令請求について多くの記述を割き、岸田文雄首相は法律に従うよりも政治を優先しているという家庭連合側代理人の見方などを紹介。在日米大使館が日本側関係者と連絡を取り合い、「あらゆる場面で信教の自由の重要性を強調した」と踏み込んだ表現をしており、日本政府の対応は信教の自由侵害に当たるとの疑念を抱いていることがうかがえる。
報告書は、昨年10月13日の解散命令請求について、刑法違反に基づくとされてきた「従来の基準から逸脱して、民法上の不法行為を基に命じられた」と指摘。盛山正仁文部科学相が示した解散の根拠に対し、家庭連合側が「法に則(のっと)っていない」と反論したことを指摘した。
また、家庭連合の信徒たちが「『偏向し』『敵対的な』報道と、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の圧力によって信仰を公にできなくなった」ほか、地域社会から関係を遮断されるなどの被害が出ていると主張していることを紹介。また、解散命令が認められれば、「教団は『悪』と認められたと社会が捉える可能性がある」という信徒側の懸念を伝えている。
家庭連合の田中富広会長は、昨年11月7日の会見で、「(2年前の安倍晋三元首相暗殺事件後)初めて教団の代表として公式にお詫(わ)び」をしたと指摘、「『信教の自由と法の支配の観点から』政府の解散命令請求とたたかう意向」を表明したことを指摘している。
また報告書は、国際弁護士の中山達樹氏が昨年9月、岸田政権は「1951年施行の宗教法人法を順守」しておらず、「政治的な意図を持って行動しているようだ」として、解散命令請求に反対を表明したことにも触れている。
一方、報告書は、米政府の対応について、「在日米大使館は家庭連合とエホバの証人を巡る問題を注意深く監視し、国会議員、政府規制当局、教会の慣行の影響を受ける人々、教会の代表者らと連絡を取り合い、あらゆる場面で信教の自由の重要性を強調した」としている。
報告書はその上で、米大使館、国務省の当局者は「国内外での信教の自由尊重で米国と引き続き協力していく」よう日本政府に働き掛けたことを明確にした。