新型コロナウイルスに関する米下院特別小委員会のブラッド・ウェンストラップ委員長(共和党)はこのほど、国務省の機密文書を閲覧し、新型コロナが中国の武漢ウイルス研究所(WIV)から流出したという「信頼できる」情報を確認したと発表した。また、中国軍がWIVでの実験に関与していたことを示す「強力な証拠」を見たとも主張。国務省に文書の全面公開を求めている。(ワシントン山崎洋介)
ウェンストラップ氏ら同委の議員らが閲覧したのは、トランプ政権時代の2020年7月と8月に米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)から、国務省に送られた機密文書だ。同委は昨年2月から同文書の公開を求めていたが、最近になってその閲覧が認められた。
ウェンストラップ氏が7日にブリンケン国務長官に宛てた書簡で、この機密文書には、新型コロナが「中国・武漢の研究所の事故に由来すること」を示す情報が含まれており、中国共産党が「これに関する十分な調査を阻止、または妨害する行動を取った」ことを示していると述べた。また、WIVと中国人民解放軍との「継続的な関係」も示唆されているという。
同文書については昨年6月、非営利団体「USライト・トゥ・ノウ」による情報公開請求を受け、その大部分が空白にされたものが公開されていた。明らかにされているのはほとんど見出し部分のみだが、中国政府による新型コロナ起源の隠蔽(いんぺい)工作やWIVと中国軍との関係を示す内容だ。
例えば、「中国政府が隠蔽していなければ、中国国内で感染拡大を封じ込めることができたはずだ」「(中国国家主席の)習近平氏は隠蔽工作における自分の役割を曖昧にするために嘘(うそ)をついた」「隠蔽と中国共産党のプロパガンダと偽情報工作」など隠蔽に習氏が関わっていたことを示す記述がある。また、「武漢ウイルス研究所の建設に関わった人民解放軍の請負業者」「WIVにおける人民解放軍の駐在は、建設完了後も継続」「WIVに中国軍の秘密研究室があるというサイバー情報」などWIVと中国軍の関係の深さを示すものもある。
だが、その詳細部分は空白にされているため不明だ。ウェンストラップ氏は、ブリンケン氏に対し、米国民に「新型コロナの起源に関する政府の証拠の全体像」を示すため、すべての情報を直ちに機密解除するよう求めた。
新型コロナの起源を巡っては、国家情報長官室は昨年6月、報告書を公開し、国家情報会議と他の四つの情報機関は、自然発生の可能性が高いと評価したが、エネルギー省と米連邦捜査局(FBI)は研究室からの流出が最も可能性が高いと考えていると発表した。また、ほとんどすべての機関が、新型コロナは「遺伝子操作された」ものではないと評価しているとし、生物兵器として開発された可能性も否定した。
新型コロナが生物兵器開発と関係しているという説は陰謀論として一蹴されがちだが、一部共和党議員はその可能性も指摘している。ウェンストラップ氏ら共和党議員は22年12月の報告書で、「新型コロナが中国の生物兵器研究計画と関係し、WIVにおける事故により流出した可能性がある」と結論付けた。その中で、情報機関の調査について、利益相反の可能性がある外部専門家に大きく依存しているほか、情報機関が重要な情報を不必要に開示していないと批判した。
来月には、WIVに資金提供を行っていた米国立アレルギー感染症研究所前所長のファウチ氏が同委の公聴会で証言する予定。国務省の機密文書の内容も、焦点の一つになると予想されており、新たな事実が明らかになるか注目される。