トップ国際北米米国グアムにスパイ侵入の懸念  中国人の不法入国急増

米国グアムにスパイ侵入の懸念  中国人の不法入国急増

グアムの米アンダーセン空軍基地に着陸するB52戦略爆撃機(米空軍提供)

米サイパン島を経由しグアムへ不法入国する中国人が近年、増加しているとして、共和党議員や地元政府からの懸念の声が高まっている。経済的な理由などが主な理由とみられるが、グアムには米軍基地が集中していることから、スパイ活動など安全保障上の問題も指摘される。(ワシントン山崎洋介)

共和党議員らが中国からの不法入国を招く「抜け穴」だと指摘しているのが、サイパン島などが属する米自治領北マリアナ諸島に適用されている中国人へのビザ免除プログラムだ。これは、中国国民は最大14日間、ビザなしで観光や商用で北マリアナへ訪問することができるというもの。

2008年に成立した統合天然資源法に基づき、国土安全保障省は翌年、中国が北マリアナに「著しい経済的利益」をもたらすと認定。中国人へのビザ免除を決定した。

問題は近年、北マリアナのサイパンを経由してボートなどで約220㌔の距離にあるグアムに不法入国する中国人が増えていることだ。今年1月6日には、グアムの北西約48㌔で遭難した約7㍍のプレジャーボートに乗っていた中国人6人が米海軍のヘリコプターによって救助された。この6人は経済的理由で亡命するため、サイパンからグアムに向かっていたと述べたという。

地元紙パシフィック・デイリー・ニュースは、複数の政府関係者の情報として、「2022年以降、118人の中国人がグアムへ不法入国したが、そのうち数人は連邦政府の監視リストに潜在的な安全保障上の脅威と記載されている」という。

グアムのジョシュア・テノリオ副知事(民主党)は同紙に、中国政府によるスパイの可能性について、「大きな懸念」を示した。また「国土安全保障省に対してより積極的に対応するよう働き掛けてきたが、残念ながら国土安全保障省は十分に取り組んでいない」と不満を示した。

マルコ・ルビオ上院議員、ジョニ・アーンスト上院議員ら32人の上下院議員は昨年11月30日、マヨルカス国土安全保障長官に書簡を送り、ビザ免除を見直すよう求めた。その中で、「北マリアナは、中国人がビザなしで入国できる唯一の米国領」だと指摘した上で、「中国共産党の侵入、スパイ活動、国境を越えた弾圧を抑止することが不可欠である」として早急な対応を求めていた。

これに対し同省は4月1日、この書簡に回答し、「ビザ手続きの悪用の根絶」に取り組むとする一方で、中国人へのビザ免除を見直す必要はないとの立場を示した。

この回答に共和党議員らは反発。アーンスト氏は、「中国共産党が米国に潜入するために手段を選ばないことはすでに明らかだ。中国人がビザの抜け穴を利用してグアムの主要な軍事施設にアクセスする恐れは日々高まっている」と指摘。その上で「バイデン政権は、中国共産党のスパイ活動を防ぐための私の呼び掛けに耳を傾けるどころか、4カ月も返事を先延ばしにした上に、時代遅れの政策を擁護した」と非難した。

米南部国境でも、中国からの不法移民が急増している。それに伴い、スパイや工作員が忍び込む可能性など、国家安全保障上の懸念も高まっている。

米国ではまた、中国関係者による米軍基地近くの土地購入が問題視されている。3月27日にはカリフォルニア州トゥエンティナインパームスの海兵隊地対空戦闘センターに侵入した中国人が逮捕されるという事件も起きた。

こうした中、中国の米国土への潜入に対する警戒感は高まっており、共和党議員らは、バイデン政権への圧力を強めていくとみられる。

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