トランプ前米大統領が大統領の座に返り咲いた場合、日本や世界にどのような影響をもたらすのか。トランプ前政権で大統領次席補佐官を務めたアレクサンダー・グレイ氏はこのほど、世界日報のインタビューに応じ、トランプ氏は1期目と同様、日本など同盟国との関係を強化し、中国の脅威に対抗することに集中すると予想した。バイデン政権は日本にLGBT法の制定で圧力をかけたが、トランプ氏であれば、同盟国の内政に干渉し、リベラルな社会政策を押し付けるような行動は取らないとの見解を示した。(聞き手=本紙主幹・早川俊行)
――日本では大手メディアを中心に、トランプ氏を「孤立主義者」と否定的に捉える見方が支配的だ。
孤立主義者という評価は、トランプ氏が大統領として挙げた実績と正反対だ。トランプ政権1期目に最も恩恵を受けた同盟関係は日本であることを考えると、そのような見方には本当に驚かされる。日米同盟ほどあらゆる次元で大幅に改善した2国間関係は他に考えられない。
トランプ氏の国家安全保障戦略(NSS)、国家防衛戦略(NDS)、インド太平洋戦略の枠組み、そしてこれらの戦略を運用するためにわれわれが実施した具体的な政策を見てほしい。日本のような重要な同盟国を米国に近づけるためにこれ以上の取り組みをした政権は近代では他にない。
歴代政権が避けてきたことを実行したのがトランプ氏だ。中国を安全保障政策の最重要課題に位置付け、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」を活性化させ、ウクライナに対戦車ミサイル「ジャベリン」を供与し、イスラエルとアラブ諸国の関係を正常化する「アブラハム合意」を実現した。
これら一連の外交実績を見れば、トランプ氏は孤立主義者ではない。極めてプラグマティックな現実主義者だ。
――トランプ氏は2017年に「米国が攻撃されても日本は助ける必要が全くない。ソニーのテレビでそれを見ていられる」と発言し、日米安全保障条約の片務性に強烈な不満を示した。トランプ氏が条約に基づく日本防衛義務を本当に果たすのか、根強い疑念がある。
トランプ氏が防衛義務を果たすことに疑いの余地はない。戦略文書や公的発言で安保条約に対する米国のコミットメントを再確認し、尖閣諸島もその対象であると公言した。
日本で行われている議論で驚かされるのは、トランプ氏の発言だけに基づいて臆測で語っていることだ。レトリックではなく、トランプ氏が4年間に実際に取った行動を見てほしい。トランプ氏が何をしたかを見れば、再び大統領として何をするかが分かるだろう。
――バイデン政権のエマニュエル駐日大使は、日本にLGBT法の制定で圧力をかけた。もしトランプ政権であれば、他国にリベラルな社会政策を押し付けるような行動を取るだろうか。
トランプ氏が日本のような緊密な同盟国の内政に干渉することを優先させたとしたら、私は非常に驚く。トランプ氏が就任した当初、われわれが最も懸念したのは、「中国の脅威にどう対応するか」だった。トランプ氏がホワイトハウスに戻れば、「中国やロシアとの大国間競争に打ち勝つためにいかに同盟を強化するか」に集中するだろう。
オバマ元政権もそうだったが、バイデン政権は同盟の戦略的意味合いとは直接関係のない文化的問題に集中している。