トップ国際北米中国バイオ企業を警戒 米議会 取引制限や「切り離し」加速

中国バイオ企業を警戒 米議会 取引制限や「切り離し」加速

ウイグル弾圧へ関与の疑い

1月30日、米議会公聴会で発言する下院中国 特別委員会のマイク・ギャラガー委員長

米議会で国家安全保障上の懸念から、中国共産党と関係の深いバイオ企業と米連邦政府との取引を制限する「バイオセキュア」法案が推進されている。これまで法案に反対してきた米医療業界団体も支持に転じるなど、勢いを得ている。

(ワシントン山崎洋介)

下院中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党)ら超党派の議員が1月に提出した同法案は、中国バイオ企業のウーシー・アップテック(無錫薬明康徳新薬開発)や華大基因(BGI)グループなどに連邦政府の資金を用いることを禁じる。またこうしたバイオ企業から製品やサービスを購入した米企業も、連邦政府との取引ができなくなる。

中国共産党と関係が深いとされるバイオ企業へ、米国の知的財産や個人の健康情報が流出することへの懸念が背景にある。

ギャラガー氏らが主導した、中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の禁止を可能にする法案は、13日に下院で可決した。こうした中、同氏主導の下、バイオ分野でも経済面で中国を切り離す「デカップリング」に向けた動きが進められている。

ギャラガー氏ら法案の提出者によると、ウーシー社は、中国共産党によるウイグル族ら少数民族に対する弾圧にも関与し、中国軍に協力して遺伝子検査所も運営している。こうした検査所は、ウイグル族らの識別のために用いられるなど、中国政府による「ジェノサイド(集団殺害)」の重要な柱の一つになっているとされる。

しかし、ウーシー社は、中国共産党や中国軍との関係を隠して、すでに米国のサプライチェーンに浸透。中国は、薬の試験に用いる霊長類の輸出規制で圧力をかけることで、米企業にウーシーへの知的財産の移転を強いてきたという。

一方、ウーシー社側は、中国共産党との結びつきなどを否定している。

法案を推進する動きの中、米医療系業界団体のバイオテクノロジー産業機構(BIO)は13日、ウーシー社が脱退したと発表。BIOのジョン・クロウリー最高経営責任者(CEO)は声明で、「海外の敵対勢力が、世界のバイオテクノロジーの中心地になるつもりだと明言しているが、米国と同盟国はこのような事態を放置することはできない」として、法案への支持を表明した。

これに先立ち、ギャラガー氏は5日、ガーランド司法長官に宛てた書簡で、BIOがウーシー社を代弁し、同法案に反対するロビー活動をしてきたとして非難。ガーランド氏にBIOを「外国代理人」と認定できるか検討するように求めていた。

BGIについては、すでにバイデン政権が昨年3月、その子会社を、米国の製品や技術の輸出を事実上禁止する対象に加えた。遺伝子データが中国政府による少数民族弾圧などに利用される危険性が高いと判断していた。

米国では数年前から、BGIなどの中国企業が米国人のDNA情報など個人情報を取得しているとして警戒感が高まっていた。中国政府がウイグル族への監視強化などの目的でDNA情報を採取していることもあり、監視や脅迫などに悪用される可能性のほか、最先端医療など将来のバイオテクノロジーを中国が支配することが懸念されてきた。

バイオセキュア法案が推進される背景には、こうした危機感がある。上院の国土安全保障・政府問題委員会はすでに6日に同法案を承認。成立には、上下両院の承認と大統領の署名が必要となる。党派を超えて広がる中、今後成立に向けた動きが加速する可能性がある。

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