【ワシントン山崎洋介】バイデン米大統領は7日夜(日本時間8日)、連邦議会の上下院合同会議で一般教書演説を行った。11月の大統領選で再選を目指す中、共和党の候補者指名を確実にしたトランプ前大統領への対決姿勢を鮮明にした。
バイデン氏は演説で、再選戦略の柱としている民主主義の擁護、中絶の権利、経済対策を強調。トランプ氏を「前任者」と呼び、語気を強めながら繰り返し批判するなど、選挙戦モードを前面に出した。
バイデン氏は「自由と民主主義が国内外で攻撃を受けている」と指摘。2021年1月のトランプ氏の支持者による連邦議事堂乱入事件について、「南北戦争以来の民主主義に対する深刻な脅威」だと主張した。
ロシアによる侵攻を受けたウクライナへの支援に後ろ向きな共和党については、「ウクライナへの支援は、米国が世界から立ち去ることを望む人々によって阻止されている」として、支援継続を訴えた。また、トランプ氏が防衛費が低い北大西洋条約機構(NATO)加盟国へのロシアの攻撃を容認するかのような発言をしたことについて、「非常に危険なことだ。受け入れることはできない」と非難した。
中絶問題については、連邦最高裁が一昨年に中絶を権利として認めたロー対ウェイド判決を覆したことに言及。トランプ氏が在任時に保守派判事を指名したことを踏まえ、「私の前任者は判決を覆すことを決意して就任した。覆されたのは彼だ。その結果生じた混乱を見てほしい」と訴えた。中絶を権利として保障する法律の制定に取り組む意向も示した。
記録的な不法移民の流入によりトランプ氏や共和党から非難されていることについては、「解決する用意はある。今すぐ法案を送ってくれ」と議会に求めた。
中国については「競争は求めるが、対立を求めていない」と従来の立場を改めて表明。「台湾海峡の平和と安定のために立ち上がる」とし、日本などを念頭に太平洋地域の同盟・友好国との連携強化を図る考えを示した。