“内向き”促す米国境問題【連載】ウクライナ侵攻2年―試練の欧州

2月24日、米東部メリーランド 州で開かれた保守政治行動会議 (CPAC)の集会で演説した トランプ前大統領(UPI)

「ウクライナを支援したい気持ちはある。ただ、これまでひたすら援助を与え続けるだけで、説明責任が果たされていない。これでは洗面台の蛇口を開けっ放しにしているようなものだ」

トランプ前米大統領の支持者であることを示す「トランプ」と書かれたバッジを胸に着けたナンシー・ヘネシーさん(60)は、ウクライナへの追加支援に反対だと語った。2月下旬に首都ワシントン近郊で開かれた保守政治行動会議(CPAC)の集会に参加していた。

ヘネシーさんは、ウクライナ戦争終結の見通しが立たない中、「いつまで海外で戦争を続けなければならないのか」と感じている。その一方で、年間、数百万人もの不法移民が南部国境から流入してきており、「本当の戦いは米国で起きている。そこにこそ資金や注意を向ける必要がある」と考える。

米議会では共和党内に国内問題を優先すべきだとの考えが広まる中、ウクライナへの追加支援の行方は見通せない状況となっている。上院は2月中旬、600億㌦(約9兆円)規模の対ウクライナ追加支援を含む対外支援法案を可決。だが、下院では多数派を占める共和党が審議入りに否定的だ。

これについてバイデン政権は、資金援助の遅れがウクライナ軍の弾薬不足を招き、ウクライナ東部の都市での撤退につながったと指摘。バイデン氏は、ウクライナ支援に反対する共和党議員について、「不条理であり、非倫理的だ」と非難した。

ウクライナ支援に後ろ向きな共和党の姿勢は、確かに憂慮すべきことである。しかし一方で、バイデン氏自身の政策がこれを助長していることも事実だ。

バイデン政権が国境問題を放置してきたことによる不法移民の急増で、治安悪化や公共サービスへの影響がすでに表れている。それだけでなく、新型コロナウイルス対策の巨額支出などで財政赤字の拡大やインフレを招いた。国内状況が手に負えない状況になる中、海外の問題どころでない、という感情が広がっているのだ。

一方、11月の大統領選でバイデン氏と対決する可能性が高まっているトランプ氏は、「ロシアに甘い」とみられがちであり、再び大統領になれば、ウクライナ支援を打ち切るのではないかとの見方もされる。しかし、トランプ前政権は、むしろロシアに対して強硬な政策を取ったのが事実だ。

例えば、ロシアの天然ガスを欧州に運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」を中止するようドイツに圧力をかけたほか、ウクライナに対しオバマ元政権が行わなかった軍事支援を実施した。

CPACで1時間以上演説したトランプ氏は、ウクライナへの追加支援には触れず、むしろこうしたロシアへの強硬スタンスを誇示した。

「彼(ウクライナのゼレンスキー大統領)に数百発の(対戦車ミサイル)ジャベリンを提供したのは私だ。そのおかげで戦争最初の2日間に100台もの戦車が撃破された。しかし彼ら(民主党)は『トランプはロシアに甘い』などと言う」

昨年7月のインタビューで、トランプ氏はもし大統領になれば、プーチン露大統領とゼレンスキー氏に取引を促し、「もし取引を成立させなければ、ウクライナがかつてないほどの支援を受けることになる、とプーチン氏に伝える」とも述べた。

トランプ氏の考える具体的な取引の内容は不明だが、ウクライナへの追加支援をロシアに圧力をかけるカードの一つとして認識していることが分かる。トランプ氏がロシアに対して安易な譲歩に陥ると決め付けるのは早計であろう。

(ワシントン・山崎洋介)

=終わり=

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