トランプ前米政権で国際宗教自由大使を務めたサム・ブラウンバック氏はこのほど、世界日報の単独インタビューに応じ、日本政府が昨年10月に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令請求を出したことについて、「今後の日本に禍根を残す」として、こうした動きが他の宗教団体にも及ぶ可能性があると指摘した。また、11月の米大統領選でトランプ前大統領が勝利すれば、この問題について米政府が「重要な懸念事項」として日本政府に提起するなど、対応に乗り出すとの見通しを語った。(聞き手=ワシントン・山崎洋介)
――トランプ前政権は、信教の自由を外交政策の優先課題として推進した。11月の大統領選でトランプ氏が勝利した場合、信教の自由にどう取り組むと予想されるか。
私の予想では、再びトランプ政権が誕生すれば、信教の自由を最優先の政策課題とし、人権外交の中核に位置付けるだろう。宗教の自由を認めない国に対しては、制裁を加えるなど、圧力を伴ったものになる。
――日本政府による旧統一教会の解散命令請求をどう見る。
それは間違った判断だ。少数派宗教団体に対して賛否があったとしても、彼らには信仰を保って平和的に生きていく権利がある。日本政府は不適切な決定をした。今後の日本に禍根を残すことになるだろう。
――今後どのような問題が起きるか。
こうした動きは通常、一つの宗教団体で終わることはない。他の宗教団体にも及ぶことになり、人々は「この団体は解散させたが、他の団体も問題ではないか」と言うようになるだろう。またこうした動きは多数派の宗教団体にも波及し、人々は「まずは一つを潰(つぶ)した。次は残りすべてを潰せ」と言うようにもなるだろう。
だから、これは一つの団体を解散させるだけにとどまることはない。一度、パンドラの箱を開けてしまえば、歯止めが利かなくなる。
これこそが信教の自由がいつの時代も、いかなる場所でも万人のためのものである理由だ。特定の団体だけを除外して、「信教の自由は、この団体を例外として、万人のためのものである」と言うことはできない。信教の自由は、すべての人々に保障されてこそ成り立つものだ。
――トランプ政権が再び誕生したら、旧統一教会を巡る問題にどう対応するか。
彼らが日本政府にこの問題を提起すると確信している。米国は日本との同盟関係を強めているが、それでもこの問題は重要な懸念事項として提起されるだろう。
旧統一教会は長年、共産主義と戦ってきた。一方、中国はさまざまな国に影響力を行使しようとしており、強固な反共の立場である旧統一教会のような団体に反対している。こうした意味でも、トランプ政権が再び誕生すれば、この問題により積極的に対応するだろう。
――旧統一教会に解散命令が下された場合、日本の信教の自由に対する国際社会の認識にどのような影響を与えるか。
国際社会に悪い印象を与えるだろう。日本は今、間違った道を進んでいる。
私が共同議長を務める「国際宗教自由(IRF)サミット」が先月末に首都ワシントンで開催されたが、そこでは各宗教の教義について議論はせず、信教の自由という普遍的な人権について語り合った。ある宗教団体の教義に対する賛否にかかわらず、すべての人に信教の自由が認められるべきだ。