米大統領選 露骨な「トランプ排除」 民主党の「禁じ手」裏目に  選挙イヤー2024 民主主義陣営の危機(1)

昨年12月7日、資産を水増ししたとして訴え られた民事訴訟で、米ニューヨーク州最高裁 判所に出廷したトランプ前大統領(UPI)

今年は米大統領選、わが国の自民党総裁選はじめ、韓国総選挙、台湾総統選などが行われる。独裁的な政治体制の中国、ロシア、北朝鮮と対峙(たいじ)し結束を示す民主主義陣営だが、不安定化の要素をはらむ各選挙を展望する。

「民主党が負ける可能性が高い」――。オバマ元米大統領は最近、周囲にこう漏らしたと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。これは、民主党内でバイデン大統領(81)の再選が危ぶまれていることを反映したものだ。

バイデン氏の支持率は40%前後と、再選を目指す現職としては記録的な低さだ。共和党主要候補との対決を想定した世論調査では、トランプ前大統領(77)らに軒並みリードを許す。

民主党関係者に焦燥感が広がる中で出てきたのが、共和党内で根強い人気を保つトランプ氏を大統領選から排除する動きだ。

西部コロラド州の最高裁は先月、トランプ氏について同州での予備選参加資格を認めない判決を下した。同最高裁はトランプ氏が2021年1月6日の連邦議会乱入事件に関与したと断定し、国家への反乱に加担した者の官職追放を定めた憲法修正14条3項を適用した。

ただ、この条項はもともと、南北戦争後に南軍関係者の公職追放を目的に設けられたものである上、トランプ氏は反乱を理由に起訴・有罪になっていない。

リベラル系メディアからも、行き過ぎを懸念する声が上がる。「有権者が候補者を選ぶ機会を否定することは、司法にとってルビコン川を越える出来事だ。何千万人もの米国人が、民主主義の否定と見なすことになるだろう」。ニューヨーク・マガジン誌のコラムニスト、ジョナサン・チェイト氏はこう断じた。

その後、メーン州でもベロウズ州務長官(民主党)が、同条項に基づきトランプ氏の立候補資格を認めないと決定した。

大統領選有力候補の出馬を法的手段で阻止する「禁じ手」とも言える動きは、逆にトランプ氏を利するとの見方も強い。民主党による「政治的迫害」の標的になっている、という同氏の主張を裏付ける形になるからだ。

実際、トランプ氏の大統領在任中、16年大統領選における「ロシア共謀」疑惑が付きまとったが、その発端となり、後に虚偽であると判明した「スティール文書」は民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の陣営が資金提供して作成されたことが分かっている。

トランプ氏に対する四つの刑事訴追についても、多くの支持者は政治的動機に基づくと捉えており、「腐敗した左翼エスタブリッシュメント(既得権益層)」との戦いを誓うトランプ氏への共感が広がる結果となっている。

「トランプ氏は自らが大統領になることを民主党が阻止しようとしている、という構図を作りたがっている」。オバマ氏の側近だったデビッド・アクセルロッド氏は先月29日、CNNのインタビューでこう危機感を示した。「起訴されて以降も、トランプ氏は支持を得る一方だ。打撃を与えると思われていたものが、むしろ力の源になっている」

これまでバイデン氏や民主党は、トランプ氏やその支持者たちを「民主主義の脅威」と見なしてきた。しかし、数千万人いるトランプ支持者を排除することの方がむしろ、「民主主義の脅威」と捉えられる可能性がある。

米の混乱、抑止力に影響も

一方、共和党指名争いではトランプ氏が独走しているが、注目されるのは、四つの刑事訴追の影響だ。トランプ氏が有罪判決を受けた場合、どのような影響が及ぶか予断を許さない。

スタンフォード大学フーバー研究所上級研究員で政治評論家・歴史学者のビクター・デービス・ハンソン氏は本紙とのインタビューで、「今回ほど混沌(こんとん)とし、二極化した選挙は見たことがない」と述べ、党派対立の激化を予想する。

米国の民主主義が混乱し、その国際的な信用や影響力が損なわれれば、中国に対する抑止力や日米同盟にも悪影響が及ぶ。波乱含みの大統領選に、今までにないほどの注目が集まる。(ワシントン・山崎洋介)

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