来年11月の米大統領選を巡り、西部コロラド州の最高裁がトランプ前大統領の同州での出馬資格を認めない判決を下したが、この訴訟を主導したのは「反トランプ」を鮮明にする民主党系団体だ。この団体には過激な左翼運動を支援する著名投資家ジョージ・ソロス氏の資金も流れている。判決の背後には、トランプ氏の大統領返り咲きを阻止するためならあらゆる手を使う民主党政治組織の思惑が見え隠れする。(編集委員・早川俊行)
コロラド州最高裁はトランプ氏が2021年1月6日の連邦議会乱入事件に関与したと断定。合衆国憲法修正14条3項は国家への反乱に加わった者が官職に就くことを禁じており、州最高裁はこれに基づきトランプ氏の同州大統領選予備選への立候補資格を取り消した。
同条項は南北戦争後に南軍関係者が公職に就くのを禁じるためのもので、しかも反乱で起訴・有罪になっていないトランプ氏に適用するのは無理があるとの見方が多い。トランプ陣営は連邦最高裁に上訴する方針だが、仮に州最高裁の判断が認められれば、この動きは他州にも広がり、政敵を排除する手段として悪用されかねない。
同州でトランプ氏の立候補資格取り消し訴訟を主導したのは、「ワシントンの責任と倫理を求める市民(CREW)」という非営利団体だ。「無党派」を謳(うた)っているが、これまでもトランプ氏やトランプ政権高官を狙い撃ちにした訴訟や苦情申し立てを乱発してきた。ホームページではトランプ氏の大統領就任日に訴訟を起こしたことを実績として強調している。
FOXニュースによると、CREWのベス・ノーラン理事長は、クリントン元大統領の法律顧問を務めるなど民主党上層部に極めて近い人物。また、ウェイン・ジョーダン副理事長と、民主党の大口献金者として知られるジョーダン氏の妻、クィン・デラニー氏は、前回の選挙でバイデン大統領の陣営に多額の寄付をしている。
同ニュースによれば、CREWは2017~21年にソロス氏の団体から計285万㌦の資金提供を受けている。このため、トランプ陣営は州最高裁判決に対し、「ソロス氏から資金提供を受けた左翼団体による選挙妨害スキーム」だと痛烈に非難した。
トランプ氏は4件の刑事事件で訴追されているが、その中の一つはソロス氏の団体から資金を提供されて当選したニューヨーク・マンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事長によるものだ。「ソロスマネー」はさまざまな形でトランプ氏の妨害工作を後押ししていることが分かる。
保守系ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」によると、CREWの理事長だったデービッド・ブロック氏はトランプ氏が大統領に就任した17年1月に、民主党の大口献金者をリゾート地に集め、トランプ氏を追い落とす戦略を提示したという。ブロック氏は民主党内で大きな影響力を持つ政治コンサルタントで、クリントン夫妻に近い人物だ。今回の立候補資格取り消し訴訟もこうした取り組みの一環といえる。
民主党政治組織は、敵視するトランプ氏を排除するためであればどんな手を使っても構わないと考えているようだ。だが、そもそもトランプ氏を大統領選に出馬させないようにするのは、民主主義の根幹を脅かしかねない。