【ワシントン山崎洋介】バイデン米政権は5日、トランプ前大統領が進めた国境沿いの壁の建設を再開すると発表した。バイデン大統領は就任直後に建設を停止したが、不法移民が急増する中、方針を転換した。これを受けトランプ氏は、「私が正しかった」としてバイデン氏に謝罪を求めた。
マヨルカス国土安全保障長官は5日、不法入国を防ぐため「国境付近に物理的な障害物などを建設する急務かつ緊急の必要性」があると指摘。壁の建設を妨げる環境規制などの適用を免除すると発表した。
2020年の大統領選で壁建設の中止を公約に掲げたバイデン氏は就任直後に中止を発表し、トランプ前政権による壁建設について「人道的な方法で移民を管理できなかった失敗の一例にすぎない」と批判していた。しかしその後、不法移民は急増し、国土安全保障省によると昨年10月~今年8月初旬までに南部国境から24万5000人が不法に入国した。
バイデン氏はホワイトハウスで、トランプ政権下の19年会計年度に割り当てられた予算を用いるとし、「法律上、割り当てられたもの以外に使うことはできない。それを止めることはできない」と弁明。壁が効果的だと思うかとの質問には「思わない」と答えた。
一方、トランプ氏は、自身のソーシャルメディアに「ジョー・バイデンは、行動するのに時間がかかり過ぎだ。米国に1500万人もの不法移民が押し寄せるのを許してしまったことを、私と米国に謝罪してくれるだろうか」と投稿。「ペテン師のバイデンが、私が正しかったことを証明するために、あらゆる環境法を破っているのを見るのはとても興味深い」とも皮肉った。
不法移民が急増する中、移民問題は来年の大統領選の主要な争点になる見通しだ。ロイター/イプソスが9月に実施した世論調査によると、「移民は生まれながらの米国人の生活を苦しくしている」という意見に賛成する米国人が54%と過半数を占めた。