
【ワシントン山崎洋介】新型コロナウイルスの起源をめぐり、米中央情報局(CIA)が中国の武漢ウイルス研究所(WIV)から流出したとの分析結果を抑圧するために、アナリストらに報酬を与えていた疑いが出ている。下院の新型コロナに関する特別小委員会のウェンストラップ委員長(共和)らが、内部告発者の証言として12日に明らかにした。
内部告発者である「科学的な専門知識が豊富なベテランの上級職員」によると、新型コロナ起源の調査チームに配属されたCIAの7人のうち6人が、新型コロナがWIVから流出したと低い確信度の評価を下すのに十分な情報が得られたと考えていた。しかし、CIAが「多額の金銭的インセンティブ」を与えることで、流出説への支持を取り下げるよう立場を変更させたという。
ウェンストラップ氏らは、CIAのバーンズ長官に宛てた書簡で、調査チームに関する文書や通信、給与情報などの提出を要求。また、当時のCIA最高執行責任者であったアンドリュー・マクリディス氏への聞き取り調査を要請している。
一方、CIA側は米メディアへの声明で「われわれは、特定の結論を出すためにアナリストに報酬を支払わない」としつつ、「この疑惑を非常に深刻に受け止め、調査している」とした。
これまで新型コロナの起源を調査した米機関のうち、エネルギー省と米連邦捜査局(FBI)は研究室からの流出が最も可能性が高いと評価。一方で、国家情報会議と他の四つの情報機関は、自然発生の可能性が高いとし、CIAは結論に至っていないという立場を示している。
トランプ前政権で国家情報長官を務めたジョン・ラトクリフ氏は4月の議会証言で、「研究所からの流出説が、情報や科学、そして常識に裏付けられた唯一の説明であると確信している」と主張。CIAが結論に至っていないことについては、「正当化できることではない。評価を下せないのではなく、下そうとしないことを反映している」と指摘していた。
流出説が政府内で抑圧された疑惑に関しては、豪紙オーストラリアンは8月下旬、米国防総省のウイルス専門家が2020年、新型コロナウイルスは研究室で作成されたウイルスである可能性が高いと分析していたが、その後この情報が「検閲」されたと報じた。国家情報長官室(ODNI)が21年に作成した報告書では、ほとんどの情報機関は、新型コロナは遺伝子操作されたものではなく、自然に発生した可能性が高いとされた。