トップ国際北米米最高裁 大学入試で人種考慮「違憲」45年ぶりの歴史的判断

米最高裁 大学入試で人種考慮「違憲」45年ぶりの歴史的判断

29日、ワシントンの米連邦最高裁の前で、 「教育の平等」を訴える人々(AFP時事)

【ワシントン山崎洋介】米国の大学が入試選考を行う際に、人種を考慮する措置を採用することはアジア系への違法な差別だと学生団体が訴えた訴訟で、連邦最高裁判所は29日、措置は法の下の平等を定めた憲法に違反するという判断を下した。40年以上にわたって維持されてきた司法判断が覆される歴史的な判断により、今後の入試選考に大きな影響をもたらすとみられる。

米国の大学は学生の多様性確保のため、「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」として入試で黒人やヒスパニック系を優遇してきた。これに対し、学生団体「公正な入学選考を求める学生たち」(SFFA)は、人種、肌の色、国籍による差別を禁じた公民権法に違反していると訴えていた。

今回の判断は、特にハーバード大学とノースカロライナ大学の方針に対するもの。これらの大学では、一部のマイノリティー学生を優遇する一方で、白人やアジア系の学生にはより高い基準を課す方針を設けていた。

9人の判事のうち保守派6人が憲法違反との判断を下した。これにより、最高裁が1978年に下した、入試選考で人種を考慮することを合憲とする判断が覆される形となった。

最高裁のロバーツ長官は、生徒は「人種ではなく、個人としての経験」に基づいて扱われなければならないと指摘。「多くの大学は、あまりにも長い間、個人のアイデンティティーの基準は、困難に打ち勝つことでも、スキルを身に付けることでも、学んだことでもなく、肌の色なのだと誤って結論付けてきた」として違憲との見解を示した。

アジア系や白人への逆差別だとして批判してきた共和党議員らは今回の判断を歓迎する一方、民主党からは反発の声が相次いだ。バイデン大統領は最高裁の判断を受けホワイトハウスで演説し、「米国にはまだ差別が存在する。今日の判決はそれを変えるものではない」とした上で、この判決は「数十年にわたる先例と重要な進歩」を後退させるものだと批判した。

6月に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、回答者の50%が、大学入試に学生の人種や民族的背景を考慮することに反対。賛成は33%だった。

今回の判断はトランプ前政権下で、最高裁判事の構成が保守派6人対リベラル派3人に逆転したことにより実現したと考えられている。来年の大統領選挙で共和党の最有力候補となっているトランプ氏は声明で、「これは米国にとって素晴らしい日だ」と歓迎し、「並外れた能力を持ち、成功に必要なあらゆるものを備えた人々がついに報われる。これは誰もが待ち望んでいた判決だ」と称(たた)えた。


アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置) 社会の少数派が受けてきた歴史的な差別を是正するため、入学選考や採用活動で優遇枠を設けるなどの取り組み。米国ではケネディ大統領(当時)が1961年に人種間の不平等緩和を目的に導入。対象も人種から女性、障がい者、少数民族へと拡大された。

大学の入学選考にも浸透したが、白人受験生から人種などに基づく差別を禁じた公民権法(64年成立)などに違反しているとの反発を招いた。78年の米連邦最高裁判決では、少数派の「入学定員枠」を設けることは違憲とされたが、人種を選考基準の一つとすることは認められた。(時事)

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