トップ国際北米CIAの政治的偏向に懸念高まる 20年米大統領選めぐり疑惑封殺 共和党が調査結果公表

CIAの政治的偏向に懸念高まる 20年米大統領選めぐり疑惑封殺 共和党が調査結果公表

CIA本部=2022年7月8日、ヴァージニア州ラングレー(UPI)

2020年米大統領選で、当時民主党候補だったバイデン大統領の息子に関わる疑惑を「ロシアの情報操作」として否定した元情報機関高官らによる書簡が、政治的動機に基づいたものであったことが問題視されている。共和党主導の下院委員会の調査により明らかにされたもので、情報機関の政治的偏向に懸念が高まっている。(ワシントン・山崎洋介)

大統領選投票日を約3週間後に控えた20年10月中旬、ニューヨーク・ポスト(NYP)紙がバイデン氏の息子ハンター氏のものとされるパソコンから見つかったメール内容を報じた。海外企業と不審な取引を行ってきたハンター氏のビジネスにバイデン氏も関わっていた可能性を示す内容で、後に本物だと認められた。

しかし、当時、米大手メディアはほとんどが黙殺するか、報道内容の信頼性に疑問を投げ掛けたほか、ツイッターなどソーシャルメディア企業がこの記事を制限し、拡散を妨げた。

こうした議論の封殺に大きな役割を果たしたのが、元情報機関高官51人による同年10月19日の書簡だった。NYPが報じたハンター氏の疑惑について「ロシアの情報操作の古典的な徴候をすべて備えている」として、ロシアによる偽情報である可能性を示唆、メディアや政治家によって繰り返し引用された。

しかし、今ではこの主張が根拠のないものであったことが明白になっている。こうしたことから、共和党主導の下院司法・情報委員会はこの51人を対象に調査を行い、10日に中間報告書を発表。この書簡がバイデン陣営の関与の下、バイデン氏を支援するという政治目的のために作成されたことを明らかにした。

報告書によると、書簡の作成を主導したのは、オバマ政権時代に中央情報局(CIA)長官代理を務めたマイケル・モレル氏だ。きっかけとなったのは、当時バイデン陣営幹部だったブリンケン国務長官からの電話だったという。

オバマ米政権時代に中央情報局(CIA)長官代理を務めたマイケル・モレル氏(UPI)

モレル氏の同委員会への証言によると、NYPがハンター氏のノートパソコンに関するスクープを掲載した3日後、ブリンケン氏は、モレル氏にこの報道へのロシアの関与について尋ねた。モレル氏はこれをきっかけとして調査を開始し、書簡の作成に取り掛かったという。

モレル氏から署名者の一人で元CIA長官のジョン・ブレナン氏に送られたメールには、モレル氏の狙いが明示されていた。それは、間近に迫っていた討論会でトランプ氏がこの問題についてバイデン氏を追及することが予想される中、「(バイデン)陣営が討論会で反論に使うための論点を与えたい」というものだった。

実際、バイデン氏は討論会でこの書簡を用いてトランプ氏の追及に反撃した。バイデン氏は「50人の元国家情報部員がロシアの計画だと言った」と反論し、NYPの報道について「ゴミ」だと否定した。討論会の後、バイデン陣営は、モレル氏に感謝の電話をかけてきたという。

報告書はこのほか、モレル氏はかつての部下と共に、メディアに書簡内容を公式発表前に報じてもらうよう売り込む際も、バイデン陣営と連絡を取り合っていたことを明らかにしている。

しかし、より深刻な問題は、CIAの現役職員が声明文の署名者の獲得に協力した可能性があることだ。報告書によると、元CIA分析官のデビッド・カリエンス氏の元に、CIA職員から電話がかかってきた。その職員はカリエンス氏に、同氏の回顧録に機密情報が含まれているかについての審査が承認されたことを告げた後、突然、書簡の内容を説明し、署名を依頼したという。

こうした問題が明らかにされたことについて、元CIA分析官でトランプ前政権で大統領副補佐官を務めたフレッド・フライツ氏は、米メディアへの寄稿で、「この書簡によって、米国の情報機関が非政治的で客観的な組織であるという評判が大きく損なわれたことを懸念している」と表明。将来の大統領が情報機関を信頼しなくなる可能性を指摘した上で、「この政治的で腐敗した書簡の作成と普及に関わったすべての人々が責任を負うことを望む」と訴えた。

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