【ワシントン山崎洋介】米国務省は15日、世界の「信教の自由」に関する2022年版の報告書を発表した。ラシャド・フセイン信教自由担当特任大使は記者会見で、中国について「多くがイスラム教徒であるウイグル族を捕らえ、投獄し、再教育施設に送り込んだ。チベット仏教徒、キリスト教徒、法輪功学習者への弾圧も続けている」と非難した。日本では安倍晋三元首相が昨年7月に暗殺された後、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が「メディアの強い関心を集めた」とし、米政府は状況を「注視した」と記載した。
報告書は、人権団体などによる情報として、中国当局は2017年以降、ウイグル人、カザフ族などの主にイスラム教徒100万人以上を広大な収容所に拘束したと強調。幾つかの人権団体は、最大で350万人が拘束されたと推計していると指摘した。
また、NGOやメディアによる情報として、中国政府が宗教団体の信者に拷問、身体的虐待や中国共産党思想の強制教化を行っているとした。宗教的信念のために中国で昨年投獄された人々は推定で「数千人から1万人を超える」と指摘した。
日本では、安倍氏の暗殺犯が、旧統一教会への憎しみが動機だと主張していると記述。昨年10月に岸田文雄首相が旧統一教会への質問権行使を指示したことや、同年12月に国会で「不当な」寄付の勧誘を禁止する法律が成立したことも挙げた。
一方、旧統一教会が、安倍氏の暗殺以来、嫌がらせや脅迫を受けていると訴えているとも指摘。パリに拠点を置く「良心の自由のための団体と個人の連携(CAP―LC)」が昨年9月と10月に国連の自由権規約人権委員会に報告書を提出し、日本で旧統一教会に対する「不寛容、差別、迫害のキャンペーン」が繰り広げられたと指摘したことにも触れた。
報告書は米政府の対応について、「大使館は、旧統一教会をめぐる諸問題を注視し、国会議員や政府規制当局、教団活動の影響を受ける人々、教団代表者と連絡を取り、あらゆるケースで信教の自由の重要性を強調した」と記述した。