【連載】G7広島サミットの焦点(2) 米国、同盟国に注文 対中露で包囲網強化を狙う

10日、米東部ニューヨーク州バルハラで演説するバイデン大統領(AFP時事)

【連載】G7広島サミットの焦点(1) ロシアの核恫喝 暴発懸念する準当事者の欧州

米国は、国内における超党派での中国脅威論の高まりを背景に、国際的な対中包囲網形成をリードしてきた。経済安全保障が主要議題の一つとなる先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、半導体の輸出規制やサプライチェーン(供給網)の脱中国依存で各国との連携強化を目指す考えだ。

台湾海峡を巡り緊張が高まる中、バイデン政権は、外国の資金や技術の軍事転用で国力増大を図る「軍民融合」戦略を問題視。これを阻止するための方策として、先端半導体などの対中輸出規制を主導してきた。

バイデン政権は昨年10月、軍事開発に欠かせない人工知能(AI)やスーパーコンピューターに使われる先端半導体の輸出制限を発表。半導体製造装置の分野が得意な日本やオランダは今年3月、それぞれ米国に追随する形で、中国を念頭に半導体の輸出規制を導入する方針を示した。

G7サミットでも、こうした輸出規制について議論される。米ブルームバーグ通信によると、バイデン大統領がG7サミットに合わせて、ハイテク分野の対中投資規制に関する大統領令に署名する計画だという。中国の軍事力を向上させる可能性のある資金や技術を断ち切ることが狙いで、サミットで他のG7諸国の支持を取り付け、対中圧力への結束を示したい考えだ。

また、ロシアがウクライナへの侵攻に伴い、天然ガスの供給停止をちらつかせるなど「エネルギーの武器化」を行ったことは、戦略物質を敵対する可能性のある外国に依存するリスクを改めて浮き彫りにした。かねて懸念されていた中国依存からの脱却も、緊急性が増している。

バイデン政権の対中経済安保政策について、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は先月下旬の講演で、「われわれはデカップリング(切り離し)ではなく、リスクを軽減し、多様化することを支持する」と述べた。

デカップリングに反対する欧州諸国への配慮を示し、中国との貿易を継続しつつ半導体やレアアース(希土類)などの重要物資で脱中国依存を進める考えだ。

台湾有事もにらみ、中国による「経済的威圧」への対応が課題となる中、G7サミットで、供給網を再構築する新たな枠組み作りで合意できるかが焦点となる。

ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、米国はロシアが制裁の抜け穴を利用して半導体などのハイテク製品を輸入していることに神経を尖(とが)らせている。他のG7諸国と協力して制裁をより実効性があるものとしたい考えだ。

英紙フィナンシャル・タイムズによると、米国は、G7各国が農産物などの一部例外を除き、ほぼすべての品目を輸出禁止にする措置を提案している。実行可能でないとして日本や欧州各国が難色を示しているが、米国家安全保障会議の担当者は同紙に「ロシアに責任を負わせる方法を探し続ける」と述べており、今後どのような具体策がまとまるか注目される。

ウクライナへの支援については、共和党内の一部で慎重論もあるが、先月の世論調査でも7割近くの米国人が支援継続を支持するなど「支援疲れ」は見られない。

バイデン政権としては、こうした世論を背景に、各国と共に今後もウクライナを支持する強力なメッセージを打ち出したいところだ。

(ワシントン・山崎洋介)

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