【ワシントン山崎洋介】世界において宗教の自由を促進することを目指す国際宗教自由(IRF)サミットが1月31日から2日間、米首都ワシントンで開かれ、政府高官や政治家、宗教家、人権活動家らが参加した。
中国やイラン、パキスタン、ウクライナなど世界各地で起きている宗教の自由をめぐる問題について幅広く議論されたが、日本で起きている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する信教の自由侵害問題も取り上げられた。
ニュート・ギングリッチ元米下院議長は1日目の講演で、昨年の安倍晋三元首相の暗殺事件後に日本で「突如として反宗教的な感情が高まり、首相が文字通りこの教団を消滅させようとしている」と批判。政府は宗教法人の解散請求を検討しているが、こうした動きを念頭に「日本の政治指導者は日本国憲法のあらゆる原則を無視すると決めた」として、信教の自由の侵害に強い懸念を表明した。
ギングリッチ氏はまた、共産党の志位和夫委員長が昨年11月にツイッターで旧統一教会とは「長い闘いだった」と述べたことに触れ、この問題の背景に「共産主義イデオロギーをめぐる政治的な戦い」があると指摘。同党にとって「共産主義が日本を支配することを阻んできたライバル」である旧統一教会を壊滅させることが目的であると断じた。
この政治的な戦いが共産主義国家である中国を利する可能性に言及し、「これは非常に危険なことだ」と危機感を示した。
続いて登壇した同サミット共同議長のサム・ブラウンバック前米信教の自由大使は、「政府がある宗教団体を排除することができるなら、他のすべての宗教団体も排除することができることを意味する」と述べ、日本の状況に懸念を表明。その上で、「日本のように憲法が整備された民主国家に対しても、われわれは声を上げ、真実を語らなければならない」と強調し、改善を求めていく姿勢を示した。
この後、日本に信教の自由擁護を求める宣言文が署名された。
2日目の分科会で演説したダン・バートン元米下院議員は、「日本政府は教団をつぶすことで、信者の宗教的自由を取り除こうとしている。それは憲法違反であり、日本が掲げているあらゆる原則に反している」と指摘。こうした動きを「直ちにやめる必要がある」と訴えた。
同サミットは今回が3回目で、米シンクタンク、ハドソン研究所やインターネット交流サイト(SNS)最大手の米メタ(旧フェイスブック)のほか、ワシントン・タイムズ財団や天宙平和連合(UPF)などが協賛した。
訪米中の台湾の游錫堃立法院長(国会議長)は2日目に講演し、「台湾は民主主義体制の発展とともに、宗教の自由を積極的に保護し、宗教の健全な発展を促してきた」とし、このことは「中国語圏で民主主義が花開くことができることを示している」と訴えた。一方、中国では「宗教への全面的な弾圧」が行われており、各地で数多くの十字架が撤去されていることなどを指摘した。
同サミットではこのほか、バイデン米政権のサマンサ・パワー国際開発庁長官やラシャド・フセイン信教の自由大使のほか、ジャッキー・ローゼン上院議員(民主党)、マイク・マッコール下院議員(共和党)らが講演。また、ブリンケン国務長官がビデオメッセージを寄せた。