トップ国際北米中国のスパイ活動の可能性 共和党、ハンター氏疑惑調査へ

中国のスパイ活動の可能性 共和党、ハンター氏疑惑調査へ

「安全保障上の問題」指摘

下院冠詞改革委員会の公聴会で発言する共和党のジェームズ・コマー議員(UPI)

先月の米中間選挙によって、下院で多数派を奪還した共和党は、バイデン氏の次男ハンター氏を巡る疑惑調査を進める方針だ。特に、中国の政治工作がバイデン氏周辺に及んでいたとみられることなどから、共和党議員らは、「安全保障上の問題」として追及する構えだ。(ワシントン・山崎洋介)

「言っておくが、これはジョー・バイデン氏に対する調査だ」。中間選挙の結果、下院で共和党が多数派を握ったことが決まった翌日の先月17日、下院監視・改革委員会の委員長に就任する見通しのジェームズ・コマー氏は、ハンター氏と外国企業との不審な取引について調査を行うと息巻いた。

コマー氏は、ハンター・バイデン氏のノートパソコンから見つかった資料や内部告発者の証言から、ハンター氏のビジネスにバイデン氏も関与していたと主張。バイデン氏が外国からの影響を受けたリスクについて、精査することを誓った。

バイデン氏は自らの関与を一貫して否定してきているが、共和党が公表した情報は、バイデン氏周辺が中国による政治工作の標的になってきた可能性を示しており、安全保障上の懸念を抱かせるものだ。

昨年1月、バイデン米大統領の就任式に出席した息子ハンター氏

ハンター氏は2017年8月、当時中国最大のエネルギー企業で、中国共産党と関係が深いとされる中国華信能源(CEFC)の叶簡明会長と合弁会社「ハドソンウエスト3」を設立した。同社は、ルイジアナ州の天然ガスプロジェクトに4千万㌦投資する取引に取り組んでいた。その後、叶氏が18年2月に突如、中国で収賄容疑により逮捕されたことで、計画は頓挫したが、ハンター氏らバイデン氏の親族は、CEFCから500万㌦を受け取ったという。

さらにこの中で、中国の情報機関関係者の可能性がある人物として浮上している女性がジャッキー・バオ氏だ。同委の共和党議員による報告書によると、バオ氏はハンター氏のアシスタントであるとともに、中国共産党関係者と連絡を取りつつ、バイデン家の財務情報にアクセスしていた。また、ハンター氏に米国内の液化天然ガス(LNG)埋蔵量を示す地図などが含まれた中国語のプレゼンテーション資料も提供していた。

叶氏が逮捕された翌月、バオ氏はハンター氏にメールで、別の中国企業による天然ガスへの投資計画を模索するよう促し、「大きな利益を生むチャンス」があると訴えた。こうした働き掛けの背景に、中国共産党の意図があることが疑われている。

さらにバオ氏のメッセージは、ビジネス上の取引にとどまらず、政治の領域にも踏み込んでいた。中国のCEFCとハンター氏らとの関係についてのニューヨーク・タイムズ紙の記事が出版された18年12月、バオ氏は、ハンター氏にテキストメッセージを送り、「ジョー(・バイデン)おじさんは2020年の大統領選に出馬すべきだ。ニューヨーク・タイムズの記事に気を取られる必要はない」と出馬を勧めるよう促している。

共和党議員が公表したメールには、バイデン氏がビジネスに関わっていたとみられる内容も示されている。例えば、ハンター氏は17年9月に、バイデン氏をハドソンウエスト3の「オフィスメイト」と呼び、同氏のために鍵を作るよう求め、連絡先として本人の携帯電話番号も記載した。

また、複数の内部告発者による同委の共和党議員らへの証言では、ハンター氏らは取引相手に、「ジョー・バイデンが2020年に大統領選に出馬し、共に仕事をした人は将来のバイデン政権で見返りを得る」約束をしていたという。

これまでは、民主党が上下院で多数派であったため、バイデン氏は、この2年間、厳しい追及を免れてきた。しかし、共和党が下院で多数派となることで、調査のために必要な人物の議会での証言や文書の提出を義務付ける召喚状を発行できるようになる。今後は議会からの、厳しい精査を受けることになり、実態解明がどこまで進むか注目される。

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