【ワシントン山崎洋介】オバマ、トランプ両米政権で北朝鮮政策を担当してきたアリソン・フッカー元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長は1日、北朝鮮が記録的な数のミサイル発射実験を実施し、7回目の核実験を行う可能性が取り沙汰されていることについて、世界各国がロシアによるウクライナ侵攻や中国と台湾の緊張の高まり、新型コロナウイルスへの対応に気を取られている中、金正恩総書記は今が「ミサイルと核の両方の開発を進展させる絶好の機会と捉えている」との見方を示した。

ワシントン・タイムズ財団が主催する月例のオンラインセミナーで講演したフッカー氏は「北朝鮮の何十年にもわたる主な目標は、核兵器国として認定されることだ」と指摘。「北朝鮮は1990年代半ばからそれを目指してきたが、彼らは今やこの目標への道を妨げるものは何もないと感じている」と強調した。
その上で、米情報機関などが数カ月前から北朝鮮が7回目の核実験を行う可能性を指摘してきたが実現していない理由について、北朝鮮は「タイミングに熟達」しており、「効果を最大化する」ことを狙ってきたと分析。先月の中国共産党大会や今月8日の米中間選挙などの時期を検討してきたとした。
日米韓3カ国は先月下旬、都内で外務次官協議を開き、北朝鮮が7回目の核実験に踏み切った場合は「比類ない規模の対応」が必要になると警告した。これについてフッカー氏は、「その言葉を裏付ける行動があると北朝鮮が確信していなければ、彼らはそれを試そうとする」と述べ、具体策を示す必要があると主張した。
セミナーでは、ジョージタウン大学安全保障研究センターのアレクサンドル・マンスロフ客員研究員が、バイデン政権による北朝鮮政策について、「今起きていることは、北朝鮮への怠慢なアプローチであるオバマ政権の『戦略的忍耐』を思い起こさせる」と批判。北朝鮮が軍事的挑発をエスカレートさせた当時と今の状況が似ていると指摘した。