【連載】焦点 2022年米中間選挙(下) 中絶問題巡り攻防 どちらの党が「極端」か

6月24日、ロー対ウェイド判決を覆す決定が下る前に米連邦最高裁前で入り乱れる中絶賛成派と反対派(UPI)

米連邦最高裁が6月下旬に人工妊娠中絶を権利として認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆して以来、民主党は中絶問題を前面に出し、テレビ広告作戦を展開してきた。

サウスカロライナ州知事選候補ジョー・カニンガム氏のテレビ広告には、40年前にレイプの被害者となり12歳で中絶を体験したという女性が登場。ロー判決により中絶が可能になり、「教育者、母親、祖母になる機会」が与えられたと感謝した。これに対し、共和党の現職ヘンリー・マクマスター知事は「すべての中絶を禁止したいと思っている」と批判する内容だ。

他の多くのテレビ広告も同様で、中絶経験者が自らの体験を語った上で、共和党候補者を例外のない中絶禁止を支持する「極端」な立場を取っているなどと非難している。

米政治専門紙ポリティコによると、民主党の候補者や党委員会、政治活動委員会は、9月末までに激戦区で100以上の中絶をテーマとしたテレビ広告を放映するため、約1800万㌦を費やした。2018年の中間選挙全体で民主党が中絶をテーマにした広告に費やした金額の3倍だという。

中絶に関して守勢が目立った共和党だったが、出産直前までの後期妊娠中絶に対する民主党候補の立場を問いただす場面も目立つようになった。むしろ民主党の方が「極端」ではないか、と浮き彫りにすることが狙いだ。

民主党がこれまで実現を目指してきたのが、中絶の権利を保障する「女性の健康保護法案」だ。胎児が子宮外で生育可能になる24週ごろまでの中絶を保障したロー判決を法制化するためのものとされるが、実際には、事実上、出産までのすべての中絶を可能にする内容となっている。昨年9月に下院を通過後、今年5月に上院で否決されたが、同法案には下院で218人、上院で46人の民主党議員が賛成票を投じている。

10月18日に行われたフロリダ州上院選の討論会。共和党の現職マルコ・ルビオ上院議員と民主党の黒人女性候補でベテラン下院議員でもあるバル・デミングズ氏との間で中絶問題をめぐり議論が白熱した。

攻勢に出たのは、ルビオ氏だった。中絶に失敗して生まれた子供の治療を拒否する医師を罰する法案にデミングズ氏が反対したことなどを指摘し、「彼女は中絶にいかなる制限をかけることも支持しない。これは過激な立場だ」と批判。これに対し、デミングズ氏は「胎児が生存可能な時期まで女性が中絶する権利を支持する」と反論したが、それ以降の中絶に制限を加えることを支持するとまでは言わなかった。

ルビオ氏は、自身が例外のない中絶禁止を支持する立場であることを追及されたが、「米国人の大多数が支持するものを尊重する」とし、例外のある法案にも賛成するとした。リンゼー・グラム上院議員(共和党)が9月に提出した妊娠15週以降の中絶を全米で禁止する法案の共同提出者になっていることも強調した。

6月下旬のハーバード大米国政治研究センター・ハリス社の世論調査によると、米国民の72%が15週以降の中絶は禁じられるべきだと回答。臨月の手前の9カ月目まで許可されるべきだと答えたのはわずか10%だった。

グラム氏の法案は、民主党や中絶賛成派から「女性の権利」を奪うものだと批判されたほか、中絶問題を州に任せるべきだとする共和党議員との意見の食い違いも露呈した。しかし、その内容はむしろ世論の多数派と一致している。

米国の国論を二分し続ける中絶問題。今回の民主・共和両党の攻防は、今後の議論でどちらが主導権を握るかも占うものになる。

(ワシントン・山崎洋介)

spot_img
Google Translate »