【連載】焦点 2022年米中間選挙(中) 現・前大統領の「効果」

距離感測る候補者たち

10月7日、米メリーランド州ヘイガーズタウンの自動車メーカー、ボルボの工場で演説するバイデン米大統領(山崎洋介撮影)

「私が米国史上最も労働組合に協力的な大統領である理由は、あなた方が世界で最も優秀な労働者であるからだ」。バイデン大統領は10月上旬、メリーランド州ヘイガーズタウンにある自動車メーカー、ボルボの工場を訪れ、そこで働く従業員たちを称(たた)えた。

バイデン氏はこの日、インフレ削減法の成立など経済成果をアピールする演説を行った。身振りを交えて訴える場面もあったが、全体的には淡々とした口調で力強さに欠けた。約20分の演説の間、拍手を受ける場面は冒頭と終了間際の計5回程度で、多くの時間、聴衆は静かに聞き入っていた。

会場には、地元選挙区で下院選に出馬している現職デイビッド・トローン氏の姿もあった。同氏は2年前、共和党候補に20ポイント近い差をつけて圧勝。しかし、今回は様相が一変し、同じ候補を相手に接戦となっている。この日の演説は事実上、同候補へのてこ入れを兼ねたものだ。

民主党にとって逆風となっているのは、過去41年間で最悪のインフレ率、過去最悪レベルに達した不法移民の流入、暴力犯罪の増加だ。支持率が40%前半に低迷する中、バイデン氏との結び付きがむしろマイナスに働くと考える候補者は多い。

中西部オハイオ州の民主党現職マーシー・キャプター下院議員は、8月に流したテレビ広告で、「ジョー・バイデンはオハイオの太陽電池メーカーを中国によって弱体化させている。だが、マーシーは共和党のポートマン(上院議員)と協力し、われわれの雇用を守るために反撃している」とのナレーションを入れた。共和党候補の広告と見間違えるような主張だ。

バイデン氏による応援を望まない候補が多い中、米メディアによると今回の中間選挙でバイデン氏が推薦したのは、下院議員3人、上院議員1人のみで、その存在感は希薄だ。

一方、共和党では、予備選の段階から大統領経験者としては異例の存在感を示してきたのがトランプ前大統領だ。米メディアによると、次期大統領選出馬に意欲を示すトランプ氏は今年、200以上の候補者を推薦。そのほとんどが予備選を勝ち抜いた。

「もし、わが国の衰退と没落を支持するならば、急進左派の民主党に投票せよ!」。10月22日にテキサス州で行った演説で、トランプ氏はインフレや不法移民問題、犯罪の増加を取り上げ、バイデン政権や民主党を皮肉交じりに批判。昨年1月6日に起きた米連邦議会議事堂乱入事件を調査する下院特別委員会を批判すると、聴衆が国家を斉唱し、演説が一時中断する場面もあった。

トランプ氏の共和党内での支持はいまだに根強いが、本選挙では同氏の存在は諸刃(もろは)の剣となる。コアな支持層を活気づけ投票に駆り立てる力は健在だが、その一方で共和党穏健派や無党派層を遠ざける恐れもあるからだ。

終盤戦に入り、トランプ氏が10月に行った選挙集会は4カ所にとどまった。各候補が「トランプ効果」の長短を慎重に見定めていることがうかがえる。これに関して、トランプ氏の顧問はワシントン・ポスト紙に「無党派層や郊外の穏健派女性の票を得たいなら、トランプ氏はおそらく最良の選択肢ではない」と影響力の限界を認めつつも、「彼が関与しなければ、MAGA(米国を再び偉大に)共和党員の一部は投票に行かないだろう」とその集票力を強調した。

中間選挙では、歴史的に野党が有利とされる中、もし共和党の結果が振るわなければ、トランプ氏に非難が向けられる可能性もある。選挙結果はバイデン氏だけでなく、トランプ氏の今後の政治的求心力にも大きな影響を与える。

(ワシントン・山崎洋介)

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