【連載】焦点 2022米中間選挙(上)

親による教育委員会への抗議活動を主導してきた市民団体「ファスト・フォー・スクールズ」のイアン・ブライアー理事(山崎洋介撮影)
親による教育委員会への抗議活動を主導してきた市民団体「ファスト・フォー・スクールズ」のイアン・ブライアー理事(山崎洋介撮影)

広がる「親の権利」運動

バイデン米大統領に対する初の審判となる11月8日の中間選挙まで1週間となった。経済や移民問題に加え、教育問題で攻勢に出る共和党に対し、民主党は中絶問題で巻き返しを図る。次期大統領選への意欲を示すトランプ前大統領の今後も占う選挙となる。(ワシントン・山崎洋介)

「トランスジェンダーが望む代名詞(彼、彼女など)で彼らを呼ぶことを教師や生徒に強要することは憲法違反だ」

首都ワシントン近郊のバージニア州ラウドン郡。10月11日に開かれた教育委員会の公聴会では、保護者らが一人ひとり登壇し、居並ぶ教育委員らを前に、トランスジェンダー生徒をめぐる方針などについて糾弾する声が響いた。

ある女性は、郡内の公立小学校に置かれているという性自認に関する絵本の一節を読み上げ、生徒たちが自らの性別に疑いを持つことを促す「プロパガンダ」本だと非難。また別の母親は、体は女子のトランスジェンダー生徒が男子トイレを使用することで、息子たちのプライバシーが侵害されていると涙ながらに訴えた。

同郡では昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を理由とした学校閉鎖の長期化や制度的人種差別が米社会に組み込まれているとする「批判的人種理論」の教育への浸透、トランスジェンダーの権利拡大に抗議する活動が激化し、「文化戦争の中心地」とも言われた。今でも、月2回のペースで行われる公聴会には、数十人の保護者らが詰め掛け、訴えを続けている。

教育の左派支配に反発

「教育委員の大多数は、その立場をより高い地位に就くための手段や政治目的を達成する場として考えている」。同郡でこうした活動を主導してきた市民団体「ファイト・フォー・スクールズ」のイアン・プライアー理事は、本紙の取材にこう語った。トランプ前政権の司法省で広報局次長を務めた経験もある同氏は、「政治的に閉ざされた空間の外からの、大多数の親の声を聞くべきだ」と求めた。

左派イデオロギーに傾倒する教委への懸念は、ラウドン郡に隣接するフェアファックス郡にも広がっている。6月下旬、教育委員会の公聴会開催前に、本人が自認する性と異なる取り扱いを他の生徒がした場合、停学処分などの罰則を受ける可能性がある規則に反対する親や住民による集会が行われた。

車道を通る車に向かって「われわれ親は立ち上がる!」と書かれたプラカードを掲げていたロースさん(76)という女性は、「トランスジェンダリズム(性自認至上主義)や批判的人種理論であれ、教委は秘密裏に決めてきた。今、親や祖父母たちは目を覚まし、声を上げている」と、本紙の取材に語った。

4人の子供のうち一番下の娘がちょうど高校を卒業したばかりだというメグ・キルガノンさん(54)は、「娘たちは男子が女子であると自認しただけで女子の更衣室やトイレに入ることが認められることに不安を感じていた。しかし、本音を語ることができなかった」と不満を述べた。

こうした親たちによる運動が全米各地で広がる中、教育問題への関心は高まっており、ワシントン・ポスト紙の9月の世論調査では、「教育」を重要課題として挙げた人は77%に上り、「経済」の84%に次いで2番目に多かった。

プライアー氏は「バイデン政権は教育改正法第9編の変更を提案し、子供の気まぐれで性別を変更できるという過激な思想を各学区に強制しようとしているが、これに対する反発は強い」と述べ、教育問題が中間選挙の結果に影響を与える可能性を指摘した。

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