
【ワシントン山崎洋介】米連邦捜査局(FBI)によるトランプ前大統領の自宅への家宅捜索をめぐり、トランプ氏支持者からは、政治目的に基づいた不当な捜査だとして不満が高まっている。その一部は、攻撃的になっており、FBIなどはソーシャルメディアに投稿された法執行機関に対する暴力的な脅迫が増加していると警告している。
オハイオ州シンシナティでライフル銃を持った42歳の男が11日、FBIビルに侵入を図った後に逃走し、警官との銃撃戦の末、射殺された。男は、トランプ氏が立ち上げたソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」で米国人に対し「戦闘に備えよ」と呼び掛けたり、「私から連絡がなければ、私がFBIの攻撃を試みたのは本当だと思ってほしい」などと投稿していた。
米メディアによると、FBIと国土安全保障省は、職員への通知で 「家宅捜索の令状を承認した連邦判事を含む、司法、法執行機関、政府関係者を標的とした複数の明確な脅迫と殺害の要求を確認した」と指摘。 これらには、FBI本部の前に放射性物質をまき散らす「ダーティボム(汚い爆弾)」を仕掛けるという脅迫や、「内戦」や「武装反乱」を呼び掛けるものもあったという。
トランプ氏やその支持者は、今回の家宅捜索について、FBIが司法の政治利用を図り、トランプ氏が2024年に大統領選に出馬することを阻止するための動きだとして非難している。
こうした見方の背景にあるのは、16年大統領選でトランプ陣営がロシアと共謀したとする「ロシア疑惑」をめぐって、FBIによる不当な捜査が行われたという不満だ。同疑惑をめぐっては、モラー特別検察官による2年近くに及ぶ調査の結果、その証拠は見つからなかった。
また、トランプ氏を支持する保守派からは、16年大統領選の民主党候補クリントン元国務長官が、長官在任中に私用のメールアドレスを公務に使っていた問題やバイデン大統領の息子、ハンター氏に関する疑惑について、同様の家宅捜索を行わないのは不公正だという指摘も上がっている。
共和党議員らもトランプ氏を支持しており、同党下院議員らは11月に多数派を奪取した場合、司法省を調査すると約束している。またモーニングコンサルトなどによる世論調査では、共和党員と共和党寄りの無党派層の57%がトランプ氏が大統領選に立候補した場合に予備選で支持するとし、7月の前回調査から4ポイント上昇した。
ただ法執行機関への脅迫が増加しているとの報道を受けて、トランプ氏は15日、フォックス・ニュースに「落ち着かなければならない」として鎮静化を求めた上で、「国を助けるためにできることは何でもする」と述べ、自身の代理人が司法省に協力を申し出たと語った。一方、「この国は非常に危険な状況だ。何年にもわたるでっち上げと魔女狩り、そして今回の件に関してかつてないほどの途方もない怒りがある」とも指摘した。