トップ国際北米女子選手ら「公平な機会を」米国 Tジェンダーの競技参加で

女子選手ら「公平な機会を」米国 Tジェンダーの競技参加で

「公平な競争」を訴える短距離陸上選手のチェルシー・ミッチェルさん

【ワシントン山崎洋介】女子スポーツへのトランスジェンダー選手の参加をめぐって米国で論争が高まっている。トランス選手の権利拡大の一環として進められてきたが、これに反対する女子選手たちが次々と声を上げている。反対派による集会で、その訴えを聞いた。

「入賞を逃した女子選手たちは多くの涙を流した。(トランス選手と共有する)ロッカールームには、強い不快感が広がり、この日のため多くを犠牲にしてきた選手たちは怒りや不満を口にしていた」

ケンタッキー州の大学水泳選手だったライリー・ゲインズさんは、トランス選手との競争を強いられた選手たちの間に広がる感情をこう伝えた。ゲインズさんらが全米大学一を決める3月の全米大学体育協会(NCAA)の大会で競ったのが、トランスジェンダーのリア・トーマス選手だ。3年前までは男子として出場していたトーマス選手が同大会の女子500ヤード自由形で優勝したことで、トランス選手の参加の是非について論争が高まっていた。

大学生の大会でトランス選手と競った水泳選手のライリー・ゲインズさん

ゲインズさんが語ったのは、首都ワシントンで行われた複数の保守系女性団体などが主催する6月23日の集会。ちょうど50年前の1972年、連邦政府の資金を受け取る教育機関で女性選手にスポーツへの機会均等の権利を与えることを義務付ける教育改正法第9編(タイトル9)が成立。その後、女子スポーツは大きく発展した。

本紙の取材に応じたゲインズさんは、トランス選手の参加反対を公に訴えることを決めた理由について、「NCAAが私や他の女子選手を後回しする対応を取ったことで、声を上げたいと強く思うようになった」とはっきりとした口調で語った。運営組織がトランスではない女子選手に寄り添ってこなかったと感じているようだ。

ゲインズさんは、200ヤード自由形でトーマス選手と5位タイだった。しかし、一つしかない5位のトロフィーは「写真撮影のため」トーマス選手に渡され、ゲインズさんには後日、郵送されると告げられたという。

しかしその後、事態の改善を求める声が高まる中、国際水泳連盟(FINA)は6月19日に方針を転換。トランス選手の女子部門への参加を事実上、禁止する規則を採用した。

ゲインズさんは、この決定について、「他の組織に先駆けて、女性スポーツの公平性を優先させた。勇気のある第一歩」と評価。ただ、「まだ戦いは終わっていない。国際オリンピック委員会(IOC)やNCAAなどもこれに追随し、あらゆる競技で同様の決定をすべきだ」と表情を引き締めた。

米国でトランス選手の参加が大きな論争となったきっかけは、2017年以降にコネティカット州で起きた出来事だ。そこでは、2人のトランス女子選手が、高校の女子陸上タイトルを15個も獲得。これに対して、4人の女子選手たちは20年2月、トランス選手の参加がタイトル9に違反しているとして、高校スポーツ統括組織に対して訴訟を起こした。

集会にはその4人のうち3人が出席。このうち短距離陸上選手のチェルシー・ミッチェルさんは、同州で「最速の女子高生」だったが、トランス選手と競争を強いられたことで、状況は一変。州の決勝で、2人のトランス選手に4度も敗れた。

ミッチェルさんは「私たち女性には活躍し、夢を追い掛ける機会が与えられるべきだ。それは公平な競争があってこそ成り立つ」と悲痛な思いを語った。

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