残虐・圧制の歴史 後世に 米首都に「共産主義博物館」

1億人超の犠牲者追悼 あすオープン

ソ連の収容所「グラーグ」に連行された少女が抱えていたテディベアなどが展示されている

共産主義がもたらす残酷さを伝える「共産主義犠牲者博物館」が13日、米首都ワシントンにオープンする。同館を運営する非営利組織「共産主義犠牲者追悼財団」によると、共産主義の歴史とその世界的な広がりをともに伝える世界初の博物館。そのイデオロギーがもたらす脅威に改めて警鐘を鳴らしている。(ワシントン・山崎洋介、写真も)

同財団の共同創設者である米シンクタンク、ヘリテージ財団のリー・エドワーズ特別研究員は、「1991年12月のソ連崩壊をきっかけに、人々は共産主義が世界の何百万人もの人々を支配していたことを急速に忘れ始めた」と指摘。博物館を開設したのは、「共産主義によって命を落とした人々への追悼と、共産主義に抵抗する人々にとって希望の灯火となるためだ」と強調する。

 同財団によると、旧ソ連など共産主義政権によって殺された犠牲者は1億人以上に上る。今もなお、全世界で15億人が中国や北朝鮮、キューバなど共産主義国の圧政下で暮らすことを強いられている。

博物館は、ホワイトハウスからわずか数ブロックほどのワシントン市の一等地にある。同財団が数百万㌦の資金を調達し、既存の2階建ての建物を改装した。

展示は、ロシア革命を起こしたレーニンによるユートピア建設の失敗やその後継者スターリンによる圧政、また弾圧を受けた人々や抵抗した人々に焦点を当てている。映像や写真のほか、プロパガンダポスターや当時の米国の新聞などの資料が並んでいる。

強制収容所の過酷な生活を伝えるコーナーでは、ソ連の収容所「グラーグ」に連行された少女が抱えていたテディベアの縫いぐるみや家族写真などが突然襲った悲劇を生々しく物語っている。収容者の証言を基に作成した映像も流され、ソ連だけではなく、中国・新疆ウイグル自治区における元収容者の証言も取り上げられている。

半年ごとに入れ替わる2階の企画展示室では、最初のテーマとして中国で民主化運動が武力弾圧された1989年の天安門事件を特集。デモ参加者が用いていたテントや90人の署名が記された大学旗、犠牲になった記者が着ていた血痕の付いたシャツなどが展示されている。

博物館が造られた背景の一つに、米国の若い世代で共産主義への抵抗感が薄れていることがある。同財団が2020年に発表した調査結果によると、ミレニアル世代(1981~96年生まれ)の27%、Z世代(97~2012年生まれ)の30%がマルクス主義を好意的に捉えていると答えた。

こうした中、共産主義の脅威を次世代に伝えようとする動きがあり、フロリダ州では先月、2023年から毎年11月7日を「共産主義犠牲者の日」とする法律が成立。公立高校で共産主義の残虐性について少なくとも45分間の授業を行うことを義務付けた。アリゾナ州議会でも現在、同様の法案を審議している。

博物館でも、今後こうした若い世代への教育に力を入れるという。同財団の副会長で博物館理事長であるエリザベス・スポルディング氏は、「共産主義についての神話や誤解が、学校の授業などで疑いなく受け入れられることが当たり前になっている」と指摘。米国や世界中の人たちが博物館を訪れ、「この破壊的なイデオロギーについて記憶し、学ぶことを心から願っている」と述べている。

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