「女性とは何か」 米で議論 LGBT擁護で揺らぐ定義

回答避けるバイデン政権

3月22日、米上院司法委員会の最高裁判事指名承認公聴会で、女性の定義について回答を拒否したケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏(UPI)

米国で「女性の定義」をめぐる議論が政治争点化しつつある。LGBT(性的少数者)の権利拡大の一環で、体は男でも心は女だというトランスジェンダーに女性スペースの使用を認めようとする動きに懸念が広がっているためだ。過激なジェンダーイデオロギーに傾斜するバイデン政権・民主党は、「女性とは何か」という社会秩序の根幹に関わる問いに答えられないでいる。(編集委員・早川俊行)

米上院司法委員会では先月、共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員とバイデン大統領から連邦最高裁判事に指名されたケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏との間で、こんなやりとりがあった。

ブラックバーン氏「女性という言葉の定義を示してほしい」

ジャクソン氏「できない。私は生物学者ではない」

ジャクソン氏は今月、上院の承認を経て就任したが、司法の頂点に立つ最高裁の判事が「女性の定義」を答えられなかったことは、大きな波紋を広げた。

下院教育労働委員会でも、ハビアー・べセラ厚生長官が共和党議員から同じ質問をされたが、答えをはぐらかしていた。この時、議員からは「男性は妊娠できるのか」という、一昔前なら考えられないような質問まで飛び出した。

バイデン政権が自分の性別は体の性別とは関係なく自分で決めることができるという「トランスジェンダリズム」を支持していることは明らかだ。「男性は妊娠できるのか」という問いも、トランスジェンダー男性を男性と認めるならば、その答えは「イエス」になり得る。だが、あまりに極端なスタンスを示せば、民主党内の穏健な有権者を遠ざけてしまうため、答えをはぐらかすしかないわけだ。

だが、性別の定義が揺らいだことで、米社会では既に深刻な影響が出ている。先月開かれた競泳大学一を決める大会では、かつて男子として活動していたペンシルベニア大学のリア・トマス選手が女子500ヤード自由形で優勝。ニュージャージー州では、女性刑務所に移管されたトランスジェンダーの囚人が女性2人を妊娠させたことが今月発覚し、衝撃を与えた。

カリフォルニア州では昨年、サウナ施設の女性エリアに、自称「女性」の性犯罪者が入り込み、他の女性客の前で男性器を露出する事件が発生。トランスジェンダリズムの広がりにより、米国ではこうした混乱の事例が後を絶たない。

女性の権利が脅かされている状況を憂慮する複数の有力女性団体は先月、「性別」や「女性」などの言葉を定義した文書「女性権利章典」を共同で発表した。女性専用スペースを守るには、あいまいになっている言葉の定義をまず明確にする必要があるとの認識からだ。

文書は、性別を「出生時の生物学的性」、女性を「生物学的生殖器官が卵子を産むように発達した個人」と定義。文書を作成した女性団体は、女性の権利を守るために、法律で正しい女性の定義を明文化するよう求めている。

こうした女性の定義をめぐる議論は、今年11月の中間選挙や2024年大統領選で争点になる可能性がある。女性の定義をはっきり答えられない民主党に対し、共和党が追及を強めることが予想されるからだ。

共和党が強い保守州では、公立学校のスポーツでトランスジェンダー生徒の女子スポーツ参加を禁じたり、学校でのLGBT教育を制限したりする法律が成立するなど、行き過ぎたLGBT運動に「バックラッシュ(反動)」とも呼べる動きが起きている。