露のウクライナ侵攻受け オリガルヒと関係解消の動き

米学術・文化機関

ロシアによるウクライナ侵攻に対して米国で非難の声が高まる中、プーチン大統領に近い新興財閥(オリガルヒ)へ厳しい目が向けられている。オリガルヒはこれまで多額の寄付を通して米社会へ浸透しており、学術・文化機関は対応を迫られている。
(ワシントン・山崎洋介)

20年間で4億㌦超の寄付

ロシア政府と関係の深い人物との関係を解消した米ニューヨーク市のグッゲンハイム美術館(UPI)

 米国で、オリガルヒへの締め付けが急速に強まっている。今月1日の一般教書演説でプーチン氏によるウクライナ侵攻を非難したバイデン米大統領は、オリガルヒに対して「不正に得た利益を取り締まる」と警告。司法省はその翌日、「腐敗したロシアのオリガルヒ」を標的にした追及チームを設置した。

 こうした監視の目は、学術・文化機関にも向けられている。

 ウクライナの関係団体や不正撲滅を求める団体などは今月3日、プーチン政権とつながりのある人物との関係を一切断つよう求める請願書を公表した。その中で、「西側諸国はついにプーチン政権のファシスト的で非人道的な性質に気付き始めた」と指摘。その上で「学術・文化機関も、プーチン政権による有害な宣伝工作に対抗するため行動する時が来た」と呼び掛けた。

 請願書は学術・文化機関に対する要望を列挙。例えば、ハーバード大学や有力シンクタンクの外交問題評議会(CFR)、ニューヨーク市のカーネギーホールなどに対し、オリガルヒであるレン・ブラバトニック氏にちなんで付けられたプログラムや建物の名称の変更を求めた。請願書によると、同氏は「プーチン政権との深い関係から莫大(ばくだい)な利益を得て、言論の自由を抑制し、腐敗したロシア当局者と協力し、ロシアの娯楽プロパガンダ媒体や世界中の反ウクライナの宣伝映画に資金を提供」しているという。

 すでに、オリガルヒを排除する動きは進んでおり、米メディアによると、銀行と天然資源で財を成したウラジーミル・ポターニン氏は、ニューヨーク市のグッゲンハイム美術館の理事やCFRの国際諮問委員を辞任した。

 ポターニン氏はまた、首都ワシントンのケネディセンターに2011年に500万㌦を寄付し、その壁に同氏の名前が刻まれているほか、寄付した資金の一部を使用して「ロシアラウンジ」として知られる部屋が設置されていた。しかし、米メディアによると、同センターは最近、名称を「オペラハウス・サークルラウンジ」に変更した。

 ポターニン氏は欧米諸国による制裁の対象とはなっていないが、プーチン氏と関係が深く、過去にプーチン氏とホッケーをプレーしているほか、ロシアのウクライナ侵略の数日後、クレムリン(大統領府)で他のオリガルヒと共にプーチン氏と面会したと報じられている。

 国境を越えた不正の実態を調査する「反不正データ・コレクティブ」の推計によると、わずか7人のロシアの億万長者が20年間で約200の米国の機関に4億3500万㌦もの資金を寄付した。同団体のケイシー・ミシェル氏らが20年に発表したリポートによると、寄付の目的は、政策決定に対する足掛かりを築くことや、自らを慈善家として位置付けて過去の不当な経済活動やロシア政権とのつながりを曖昧にすることだという。

 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻後、こうしたつながりは学術・文化機関にとって、その評判を傷つけるリスクを抱えることを意味する。一部で問題視されながらも見過ごされてきたが、これを機に関係を断ち切る動きが一気に広がりそうだ。

 こうした状況について、ブルームバーグ通信は、「ロシアのエリートは、財産を再び形成するための方法は幾つか持っているが、こうした機関での地位を取り戻すことはより困難になる可能性がある」と、その影響が長期に及ぶ可能性を指摘している。

spot_img
Google Translate »