トップ国際北米トランプ氏のロシア疑惑で新情報 クリントン陣営が「スパイ」

トランプ氏のロシア疑惑で新情報 クリントン陣営が「スパイ」

トランプ前米大統領のロシア疑惑の発端について捜査するジョン・ダーラム特別検察官により、その実態が解明されつつある。疑惑は、2016年大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の選対関係者によって作り出されたものであるという構図がより明確になっている。(ワシントン・山崎洋介)

ホワイトハウスのデータ入手

ダーラム氏が11日に裁判所に提出した文書に盛り込まれた新たな情報が大きな注目を集めた。クリントン氏の陣営とつながりのある人物が、トランプ氏がロシアと秘密裏に結び付いているという「物語」を作り出すため、トランプタワーやホワイトハウスなどのインターネットデータにアクセスしていたというのだ。

2016年にクリントン陣営関係者がインターネット情報を取得したとされる米ニューヨーク市のトランプタワー(UPI)

この情報は、連邦捜査局(FBI)に虚偽の説明をしたとしてダーラム氏によって昨年9月に起訴されたクリントン陣営の弁護士、マイケル・サスマン氏に関する訴訟内容を補強する文書に盛り込まれていた。

ダーラム氏によると、サスマン氏は16年9月、FBIにトランプ氏の一族企業「トランプ・オーガニゼーション」とロシアの銀行の間に秘密の通信手段が存在すると主張。しかし同氏は、FBI担当者にクリントン陣営との関係を隠し、いかなる顧客も代理していないと語った。

起訴状によると、実際には、サスマン氏はクリントン陣営の依頼に基づきこうした「疑惑」を捜査当局やメディアに売り込む仕事を行っており、その報酬を同陣営に何度も請求していた。

今回、明らかにされたのは、このサスマン氏と協力していた情報サービス会社「ニュースター」幹部のロドニー・ジョフィー氏が、他の研究者たちと共に、ニューヨーク市のトランプタワーやトランプ氏のアパート、ホワイトハウスなどの非公開のインターネットデータを政治的な目的で調べていたことだ。

こうしたジョフィー氏の調査は、トランプ氏とロシアを結び付ける「推論」や「物語」を作り出すことが目的だった。こうした仕事によってクリントン陣営の「VIPたち」を喜ばせようとしたという。

とりわけ注意を引くのは、ジョフィー氏らが、ホワイトハウスのインターネット情報をも利用していたとされることだ。ホワイトハウスと結んだ契約を通して、データにアクセスできたという。

ダーラム氏は、ジョフィー氏らがこの情報を「トランプ氏の評判を傷つける情報」を集めるために「悪用」したと断じた。サスマン氏は、ホワイトハウスのものを含むデータを17年2月9日、中央情報局(CIA)に提供し、トランプ氏やその側近らが珍しいロシア製の携帯電話を使用していたと訴えたが、ダーラム氏はその主張には全く根拠がないとしている。

ただ、どの時期のホワイトハウスのデータが用いられたかについては、ダーラム氏は言及していない。トランプ氏の在職中に行われたとも受け取れるため、同氏は声明で、「ヒラリー・クリントンと極左の民主党員が、在任中の米大統領のスパイを行ったことは、ウォーターゲート事件よりもはるかに大きな犯罪だ」と批判した。

これに対し、サスマン氏の代理人は声明で、CIAに提供されたデータは、すべてトランプ氏が就任する前のものだと主張している。いずれにしても、非公開のホワイトハウスのインターネット情報がなぜクリントン陣営側に提供されたかなど疑問点は多く、今後の審理で詳細が明らかにされることが待たれる。

ダーラム氏はこれとは別の捜査で、トランプ氏がロシアとのつながりを主張する「スティール文書」の作成経緯を明らかにし、その内容が噂(うわさ)話や嘘(うそ)の寄せ集めであったことを示したが、これももともとクリントン陣営が資金提供して作成されたものだ。

トランプ氏のロシア疑惑は、当時メディアが激しい追及報道を展開し、民主党からは一時弾劾論が高まったが、モラー特別検察官による2年近くに及ぶ調査の結果、その証拠は見つからなかった。今では、その発端において、クリントン陣営が中心的な役割を果たしていたことが浮き彫りとなっている。

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