
米国とイランの戦闘終結に向けた協議が停滞する中、米・イスラエルはイランへの攻撃再開を準備している。イランは停戦期間を利用して、攻撃で破壊された主要ミサイル基地の復旧を急速に進め、戦闘態勢を回復させている。(エルサレム森田貴裕)
米国はイランに対し、核兵器開発の放棄、ウラン濃縮の停止や全濃縮ウランの引き渡しなどを求めている。一方、イラン側は、米国の提案を拒否し真っ向から対立。イラン周辺地域からの米軍撤退や海上封鎖の解除、レバノンを含む全戦線での戦闘終結などを要求している。
イランは、5年間のウラン濃縮活動停止を提示し、米側が求めるウラン濃縮活動の放棄を拒否している。また、核開発計画に関する問題については、戦闘終結や米国の制裁解除と引き換えに協議できるとして、先送りする方針を示している。これに対し米国は、4月に仲介国パキスタンの首都イスラマバードで行われたイランとの停戦協議で、核兵器製造につながるウラン濃縮を従来の恒久的放棄から転換させ、20年間のウラン濃縮停止を求めた。
2月28日に開始された米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦は4月8日、2週間の攻撃停止に入った。その後、トランプ大統領は、イランとの協議が終了するまでとして無期限の停戦延長を発表した。イランは協議開始以来、譲歩を見せず対立の姿勢を変えていない。
トランプ氏は5月15日、イランの核開発計画停止について、「本物の20年間」でなくてはならないと強調した。トランプ氏は、FOXニュースのインタビューで、「イランは合意を交わすたびに、翌日にはまるでその話し合いがなかったかのように振る舞う」と非難。「イランが核兵器を保有することは許されない」と述べた。また、イランとの協議で核問題解決の糸口がつかめないことから苛立(いらだ)ちを募らせ、イランに対し「我慢の限界に達した」「合意するか滅ぼされるかのどちらかだ」とも述べている。
米国防総省は、イランの軍事目標やインフラに対する攻撃を準備している。米ニューヨーク・タイムズ紙が米当局者らの話として報じた。停戦開始以来、米軍は1カ月の攻撃停止期間を利用して、軍艦の再武装と攻撃機の増強を進めてきた。当局者らによると、地中深くに埋もれた高濃縮ウランを回収する特殊作戦部隊の地上派遣も検討されている。高濃縮ウランの回収には死傷者が多数出るリスクがあり、作戦地域周辺に防衛線を築くため数千人規模の支援部隊が必要となり、イラン地上部隊との交戦も予想される。ペルシャ湾にあるイランの主要石油輸出拠点カーグ島の制圧作戦にも部隊が投入される可能性があり、既に米陸軍第82空挺師団約2000人と海兵隊員約5000人が作戦地域に展開し、命令を待っているという。
一方、イランも戦闘再開に備え、戦闘態勢を回復させている。米国との交渉でイラン側の責任者を務めるガリバフ国会議長はSNSで、「わが軍は、いかなる攻撃に対しても適切な対応を取る準備ができている」と述べている。米情報機関によると、イランは停戦を利用して、攻撃で破壊されたミサイル基地、発射装置、地下施設の復旧を急速に進め、大部分を使用可能の状態にさせた。さらに、ホルムズ海峡沿いにあるミサイル基地33カ所のうち30カ所が稼働可能の状態で、米軍艦船や石油タンカーの航行を脅かす可能性がある。
イスラエルも対イラン攻撃再開に向けて万全の態勢を整えている。イスラエル高官は、イスラエルの民放「チャンネル12」で、「われわれは数日から数週間の戦闘に備え、米大統領の最終決定を待っている」と述べた。イスラエル側の見解では、トランプ氏は発電所や橋梁(きょうりょう)などへの限定的な攻撃に踏み切る可能性が高いという。
ホルムズ海峡で立ち往生した船舶を退避させるための「プロジェクト・フリーダム」の再開も考えられる。当局者によると、イランへの経済的圧力を高めるため、イランに対する封鎖措置はさらに強化される可能性があるという。
イランの強硬な対立姿勢が続く限り、イランの核開発計画を巡る米国とイランの外交協議は合意に至らず、米・イスラエルが近く攻撃を再開する可能性がある。





