
米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦が続く中、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエル軍の戦闘が激化している。イスラエルはレバノン南部を管理下に置く方針だ。(エルサレム森田貴裕)
イスラエル軍は4月4日未明、レバノンの首都ベイルートを攻撃した。ヒズボラのテロインフラを標的に空爆を実施したと主張。また、レバノン東部のリタニ川に架かる橋を破壊した。
イランの代理勢力であるヒズボラは、2024年11月からイスラエルと停戦状態だったが、米イスラエルによる26年2月末のイラン最高指導者ハメネイ師殺害を受け、血の復讐(ふくしゅう)として3月2日に攻撃を再開。イスラエルに向けて多数のロケット弾を発射した。
イスラエル軍は大規模空爆で応戦。ヒズボラの精鋭「ラドワン部隊」の侵入を防ぐため北部国境に部隊を増派し、レバノン南部に地上部隊を投入した。その後、数百人の戦闘員がレバノン南部に向かって移動したことを受け、地上作戦を拡大した。ヒズボラはこの1カ月間の戦闘でイスラエルに向けて1300回以上の攻撃を行った。これに対しイスラエル軍は、ヒズボラの拠点3500カ所以上を攻撃した。レバノン当局によると、レバノンでは3月2日以降、イスラエル軍による攻撃で1360人以上が死亡、116万人超の住民が避難を余儀なくされた。
イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリスト、ロン・ベンイシャイ氏によると、ヒズボラは依然として相当な戦力を有しているという。当初の軍事力の約20%を保持していると推定され、約2万5000発のロケット弾やミサイルを保有する。そのほとんどは短距離ミサイルだが、数百発はテルアビブに到達可能な精密誘導ミサイルだという。また、数千発の対戦車ミサイルや、対艦ミサイルも保有している。
ラドワン部隊の戦闘員は約5000人。ヒズボラが「バドル作戦地域」と呼ぶリタニ川北側に展開し、対戦車ミサイルやロケット弾、ドローンを発射している。ヒズボラは当初、これらの地域を拠点にイスラエルに侵攻しガリラヤ地方を占領する予定だったという。
イスラエルのネタニヤフ首相は3月末、越境攻撃を阻止するため、レバノン南部の安全緩衝地帯拡大を命じた。イスラエルは、ヒズボラとの紛争終結後、国境からリタニ川までの約30㌔の全域を「防衛的緩衝地帯」として管理下に置く方針だ。
レバノン軍は1月、リタニ川以南の地域を制圧したと発表した。しかし、ネタニヤフ氏は、「ヒズボラはイランの支援を受けて再武装している」と主張、レバノンがヒズボラの武装解除に失敗した場合、イスラエルは停戦合意に基づき自衛権を行使すると警告していた。
イスラエル軍は4月初め、レバノン南部でラドワン部隊の戦闘員らを拘束した。戦闘員らの供述から、ヒズボラはイランを支援するために参戦したことが明らかになった。戦闘員らは23年から1年半にわたるイスラエルとの戦闘で疲弊し切っていた。ある戦闘員は「士気はどん底だ。誰も戦場に出て戦う気力がない」と説明。命令を拒否する権利はなく、体がぼろぼろでも戦地に送り込まれるという。
バルイラン大学のベギン・サダト戦略研究センターの元所長であるエラン・オルタル准将(予備役)は、ヒズボラは現在明らかに不利な立場にあり、イスラエルの軍事作戦でラドワン部隊を壊滅させ、ヒズボラとの戦争を終結させることができる絶好の機会だと分析。結果、レバノン政府が南部における主権を確立し、今後の消耗戦を回避できるという。
イスラエル軍は兵士の交代要員として招集された予備役と正規軍の任務期間をさらに9週間延長した。ベンイシャイ氏によれば、レバノン南部に投入された地上部隊は、ヒズボラを着実に北へ追いやっている。イスラエルによるレバノンへの攻撃は、今後も続く可能性がある。






