トップ国際中東トランプ大統領激怒による日本の危機からの逆転劇

トランプ大統領激怒による日本の危機からの逆転劇

戦争学研究家 上岡龍次

トランプ大統領の激怒と日本の危機

 アメリカ軍とイスラエル軍共同のイランへの攻撃が始まるとトランプ大統領が想定するよりも上手く作戦が進行していた。イギリスはアメリカ軍とイスラエル軍を支援するためにイギリス海軍の空母打撃群を中東に派遣する動きを見せると派遣を拒否した。トランプ大統領は作戦は直ぐに終わると思い勝ち馬に乗るイギリスに怒るが、その後からイラン側の抵抗が続き長期戦へ移行した。

 トランプ大統領は方針を変更して日本とヨーロッパにホルムズ海峡防衛に軍隊を派遣するように要請する。しかしヨーロッパ各国はトランプ大統領の暴言に怒っており「我々の戦争ではない」と派兵を拒否した。日本も派遣に消極的だったためトランプ大統領は激怒した。

 この時の日本の未来は台湾有事にヨーロッパとアメリカが参戦しない状況になっていたが、水面下での調整があったらしく3月19日の日米首脳会談辺りからアメリカ・ヨーロッパ各国・日本の関係が集団的自衛権へ移行していた。

危機的な状況だった

 結論から言えば、アメリカのトランプ大統領の短絡的な暴言が集団的自衛権を混乱させる原因だった。イランに奇襲攻撃を行うならば同盟国にも教えない。だからイランへの攻撃が開始されてから日本・ヨーロッパ各国に通達することは理解できる。しかしアメリカを支援する動きを見せても参加を拒否。しかしイランへの攻撃が長期化すると判断したら、今度は日本・ヨーロッパ各国へホルムズ海峡防衛に参加するように要請。

 これではアメリカの同盟国といえども「我々の戦争ではない」と参加を拒否するのも理解できる。だが日本から見ればヨーロッパ各国がホルムズ海峡防衛なのに「我々の戦争ではない」と派兵を拒否したことは、日本有事にヨーロッパ各国が「我々の戦争ではない」と日本を見捨てることを意味していた。

 さらにアメリカからのホルムズ海峡防衛に日本が自衛隊を派兵しないことはアメリカを見捨てる行為。すると今後想定されている日本有事にアメリカはアメリカ軍を参加させない可能性が高い。そうなると最悪の場合は日本の自衛隊単独で中国・ロシアと戦争することになった。トランプ大統領だけではなく、これからの大統領・アメリカ市民から見れば「トランプ政権時代に日本はアメリカを見捨てた」前科が残る。すると中国・ロシアの世論操作で日本を助けないこともあり得る危機だった。

水面下で動いていた

 一時的にアメリカと日欧の関係が悪化したので、日本は日本有事にアメリカ軍を参加させないこともあり得る状況だった。しかし水面下では調整が進んでいたらしく、3月20日になると日本・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・オランダの計6カ国首脳がイランとホルムズ海峡に関しての共同声明を出した。

 ・「安全航行を確保するための適切な取り組みに貢献する用意がある」
 ・「ペルシャ湾でのイランによる非武装の商船、民間の石油・ガス施設などを狙った攻撃、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を最大限の言葉で非難する」

 6カ国の共同声明により、消滅していた集団的自衛権がアメリカを中心とした集団的自衛権に戻ることが確定。初期段階の集団的自衛権だが、これで後のアメリカから”日本はアメリカを捨てた”と言われない。さらにヨーロッパ各国もアメリカを捨てたとも言われない。同時にヨーロッパ各国は台湾有事・日本有事に日本とアメリカを支援することが確定した。

■22か国がホルムズ海峡の安全確保に協力表明、共同声明
https://www.afpbb.com/articles/-/3627670

 その後イランを批判する国は6カ国から22カ国へ増加したことでアメリカ主導の集団的自衛権は安定化していく。国際社会は強国が派兵を要請したら軍隊を派兵する。これは“我が国は火事場泥棒ではない”ことを示すため。だから軍隊を派兵するとしても派兵戦力と任務は調整される。

■The White House

<翻訳:「我々の人々を安全に保ち、我々の国々を繁栄させ、我々の同盟を何世代にもわたって繁栄させていきましょう。」 – ドナルド・J・トランプ大統領>
 日本の高市首相とトランプ大統領による日米首脳会談は絶望的な状況で始まったが、予想に反してトランプ大統領はご機嫌だった。イギリスはアメリカ軍の利用を拒否していたディエゴガルシア島の利用を許可。これでトランプ大統領とヨーロッパ各国との不平は残るが、結果的にはトランプ大統領が望む集団的自衛権に移行している。

予想外の国益

 高市首相とトランプ大統領による日米首脳会談は予想外が続いた。会談が始まる前は絶望的な予測だったが中身は別物。イランに対する対応が水面下では調整が行われていただけではなく中国に対する方針も一致していた。

■台湾問題、現状変更に反対 日米首脳
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026032000392&g=pol
日米首脳:”武力や威圧を含む一方的な現状変更の試みに反対することで一致した”

 日米首脳による台湾問題は、台湾有事・日本有事を明確に定めることを意味している。つまり、“現状打破を求める中国を明確に否定し、アメリカと日本は連合して中国から台湾を守る”ことを意味する。このため日米首脳会談はホルムズ海峡防衛だけではなく台湾防衛・バシー海峡防衛まで含んだ大成功の会談だった。

 今の日米安全保障条約に台湾を守ることは規定されていない。しかし日米首脳会談では直接ではなく間接的に日米安全保障条約を用いて台湾を守ることになった。これは日本の国益であり台湾南部のバシー海峡を防衛することが明確になり、さらに拡大されるとヨーロッパ各国も台湾有事になると軍隊を派兵する可能性がある。

■ドイツ、安保で日本と連携強化 インド太平洋演習に部隊派遣拡大
https://www.tokyo-np.co.jp/article/476418

 ドイツが日本を含むインド太平洋地域に艦船や戦闘機の派遣を続けているのは事実。それなのにトランプ大統領が要請したホルムズ海峡防衛では「我々の戦争ではない」と参加を拒否していた。それだけトランプ大統領に反発したドイツだが、国益を優先して日本との連携強化を選んだ可能性がある。

 ドイツから見てもインド洋・太平洋の安定化は国益になる。そうなるとホルムズ海峡・マラッカ海峡・バシー海峡までドイツの安全保障に組み込まれ、アジアでの拠点としての日本との連携強化は当然の流れ。さらにアメリカ主導の集団的自衛権が発動された時にはドイツも参加しやすい土台になった。

結果が良ければ全て良し

 日米首脳会談はイランに対する作戦だけだと思われたが結果は別物。確かにイラン包囲網とも言える集団的自衛権が発動しイランは孤立。イギリスがインド洋のディエゴガルシア島のアメリカ軍の利用を許可するとイランは弾道ミサイルを用いて攻撃した。しかしイランの弾道ミサイル1発は迎撃され、もう1発は故障で到達しなかったとされる。

 だがイランがディエゴガルシア島を弾道ミサイルで攻撃した事実は、同じ射程距離を見るとヨーロッパの大半を射程圏内に収める。これでヨーロッパ各国は直接イランから攻撃される危機になり我々の戦争になってしまった。イランはヨーロッパ各国とアメリカを離反させるべきなのに結果的にトランプ大統領を喜ばせることをした。

 さらに日米首脳会談でアメリカと日本の共同で台湾を守ることが決まった。共同で現状維持を行い現状打破を認めないことで一致。これは現状打破を行うイランに対しても裏の意味で一致する。このため日本は水面下で対イラン戦を実行していることを匂わせるが、これは戦後に明らかになれば良いだけのこと。日本がホルムズ海峡防衛に参加していなくても、裏で参加しているからトランプ大統領は怒らない。ならば日本の国益になると同時に憲法9条問題も回避しながらの外交になっただけ。ならば良いことだ。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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