トップ国際中東高市首相は国益のために海上自衛隊を派遣すべき

高市首相は国益のために海上自衛隊を派遣すべき

戦争学研究家 上岡龍次

横須賀の海上自衛隊基地に停泊中の海上自衛隊のまや型ミサイル護衛艦「まや」(左、DDG-179)と「あたが」(DDG-177)(UPI)
横須賀の海上自衛隊基地に停泊中の海上自衛隊のまや型ミサイル護衛艦「まや」(左、DDG-179)と「あたが」(DDG-177)(UPI)

短期戦から長期戦へ

 アメリカ軍とイスラエル軍によるイランへの攻撃は2026年2月28日から始まった。初期段階の攻撃でイランのイスラム政権・革命防衛隊は指導者の多くが排除された。しかしイスラム政権・革命防衛隊の体制は新指導者を選出し崩壊しない。アメリカ軍とイスラエル軍は何度も空爆を繰り返しているが革命防衛隊による抵抗が続いている。

 革命防衛隊は湾岸諸国への報復攻撃を続けており、湾岸諸国からイランを批判する声が増加した。3月11日の国連安全保障理事会で15カ国はアメリカとイスラエルによる先制攻撃には触れないまま、イランによる湾岸諸国への報復攻撃を非難する決議案を賛成多数で可決。

 湾岸諸国にイランを守る国は現れずイランの孤立が目立つ。ロシアと中国は国連安全保障理事会で棄権するがイランに対して有効な支援は行っていない。しかしアメリカ軍とイスラエル軍による攻撃が2週間を超えるとアメリカのトランプ大統領の方針は短期戦から長期戦に移行した。

トランプ大統領の誤算

 私見ではトランプ大統領はアメリカ軍とイスラエル軍の空爆だけで対イラン戦は短期戦で終わると予想していた。たしかにアメリカ軍とイスラエル軍の初期攻撃でイスラム政権・革命防衛隊の指導層の多くが排除された。これは3000年の戦争史から見ても異例。諜報機関と精密誘導弾の優秀さを世界に示した事実だった。

 だがイスラム政権・革命防衛隊はイスラム教シーア派がイラン革命(1978年1月- 1979年2月)で政権を奪った組織なので、これまでイスラム政権は宗教組織の私兵である革命防衛隊を用いてイラン国民を恐怖で支配していた。

 だからイスラム政権・革命防衛隊は降伏すればイラン国民から報復を受けることを理解している。ならばイスラム政権・革命防衛隊は狂信的に抵抗することは間違いない。私の推測ではトランプ大統領はアメリカ軍とイスラエル軍が空爆を行えばイラン国民がイスラム政権に対して蜂起すると予想したのだろう。

 革命防衛隊は正規軍であるイラン軍の反乱とイラン国民の蜂起を警戒して創設された宗教組織の私兵。トランプ大統領から見てもイラン軍とイラン国民が蜂起すると予想したのも頷ける。しかしイラン各地を空爆してもイラン軍・イラン国民は蜂起しない。これで短期戦では終わらず長期戦の流れになった。だがトランプ大統領の方針切り替えも早く、海兵隊の中東派遣が匂わされ、先週はホルムズ海峡の防衛は不要だと言いながら今になってホルムズ海峡防衛を各国に“期待する”発言をした。

要請ではなく期待

 トランプ大統領は対イラン戦が長期戦になると判断したのか、各国に艦艇を派遣することを期待した。しかも“イランの脅威を取り除くため、中国、フランス、日本、韓国、英国が艦船をこの海域に送ることを「期待している」”と記述している。これは何を意味するのか?

■トランプ氏、ホルムズ海峡へ日本などの艦船派遣を期待
https://www.afpbb.com/articles/-/3626660

 期待であればアメリカからの正式な要請ではない。このため各国に対して“ホルムズ海峡防衛のために海軍派遣の準備をしてくれ”との意味になる。実際に派遣するとしても直ぐには実行できないのが現実。事前連絡や調整などが必要だし、例えばアメリカと日本で派遣する艦艇の種類や数の調整が必要になる。

 国際社会では時の強国が紛争解決のために軍隊の派遣要請を各国に出す。強国から軍隊派遣要請を受けた国は、「自国は火事場泥棒ではない」ことを示す目的で軍隊を派遣する。同時に強国は各国の国力に合わせて派遣する戦力を提案する。この時に戦力を調整するのも強国のマナー。このため時の強国からの独裁ではないから無理難題な戦力にはならない。

 今はトランプ大統領からの派遣を期待する文言だから、これから各国に準備を進めてもらう。その後に各国と調整してから正式に派遣要請に変わる流れ。

戦前の日本の政治家と官僚の過ち

 戦前の日本は軍隊の暴走だと言われるが、実際は政治家と官僚が国際社会のマナーを知らないことが戦争に至った原因。日露戦争ではアメリカが仲裁国になったが、国際社会では仲裁国に手数料を支払うのがマナー。日本は仲裁国アメリカのお陰で有利な条件で戦勝国になれた。だから日本はアメリカに手数料を支払うはずが、当時の日本の政治家と官僚はこのことを知らなかった。

 当時のアメリカはシベリア利権を求めていたので、民間人のハリマンを中継して間接的に日本の政治家にハリマン構想を打診した。間接的なアプローチだったこととハリマンが民間人だったことから、政治家と官僚は理解できなかった。これは日本側の問題なのだがアメリカが怒る原因の一つになった。

■存立危機事態、他国から言われて判断することはない=茂木外相
https://jp.reuters.com/markets/japan/HB3V44XAHFPYVKH6DH7QRCE6IU-2026-03-06/

■高市総理“事前準備として自衛隊派遣想定できず” ホルムズ海峡の機雷敷設めぐり
TBS NEWS DIG Powered by JNN

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2526886

■自民・小林鷹之氏、中東への自衛隊派遣「船舶護衛は慎重に判断」 NHK番組で
https://www.sankei.com/article/20260315-E6BRWQZ4SVKAVBALJ36AQ32WSU/

 私見ではニュースを見ると高市首相だけではなく他の政治家も国際社会のマナーを知らないようだ。第一次世界大戦に日本は連合国側として参戦した。しかし当時の日本政府はイギリス・フランスから陸軍2千人派遣を要請されたが拒否。それに対して当時の日本政府は、遠方のヨーロッパではなく眼の前の太平洋にドイツ植民地パラオがあり、ドイツは交戦国だからパラオの占領で派遣の代わりになると考えた。

 実際は白人世界から「日本は火事場泥棒だ!」と思われた。何故なら要請外のことをしたからだ。白人世界でA国とB国が戦争をする。C国は両国の戦争を悪用して火事場泥棒をした。戦後になるとC国は報復を受けた。怒ったC国は報復。この繰り返しがヨーロッパを疲弊させた。この経験から白人世界では時の強国が軍隊派遣を要請したら軍隊を派遣するのがマナーになった。

・要請外のことをしない。
・要請以上の戦力を派遣しない。

 今の国際社会のマナーや国際条約などは白人世界の価値観だが従うのもマナー。何故なら今の平和は強国に都合が良いルールだから現状維持派になる。それに対して今の平和のルールに反発する国は現状打破派と見なされる。日本が国際社会のマナー・国際条約に反発することは現状打破派と見なされ平和を否定する国に断定される。

 シベリア派兵(1918年―1922年)で日本も要請を受けて日本軍を派兵した。しかし軍隊の派兵は8千人を超えない約束があったのだが、当時の日本は2万人を超えた7万3千人を派兵した。これは白人世界から「日本は領土的野心がある、火事場泥棒だ」と思わせた。

 当時の日本が要請以上の派兵をしたことと戦略単位である2万人を超え、陸戦で一人前の戦力である10万人に近い7万3千人になったことが致命的となった。陸戦では2万人は戦術の最大単位であり戦略の最小単位。4万人で隣国に侵攻する威力偵察になる。そして10万人で一人前の戦力だから白人世界を怒らせることをした。

 このようなことを戦前の日本の政治家と官僚は白人世界に対して続けて行った。白人世界は日本からの度重なるマナー違反に怒りアメリカ主導のABCD包囲網に至り日本を戦争へと導いた。このような戦前の日本の政治家の失態を見ると、今の自民党は国際社会のマナーを知らない者が多いと言える。

 日頃から国際社会・国際条約だと口にする者たちは、日本が自衛隊を派遣することに反対している。これは国際社会のマナーを知らないか、意図的に日本が世界から嫌われ孤立することを高市首相にさせたいのだ。日本が国際社会に貢献することは良いことだ。ならば国際社会のマナーに従いホルムズ海峡防衛に海上自衛隊を派遣することは良いことだ。派遣するだけで日本は火事場泥棒ではないことを示し、海上自衛隊は平和のために活動する名誉が与えられる。

中国には大迷惑な期待

 トランプ大統領からの期待は日本だけの悩みではない。もっと苦しい立場になったのは中国。何故なら中国はロシアと共にイラン支持の立場。それなのにトランプ大統領はホルムズ海峡防衛で中国にも艦艇派遣を期待している。これは何を意味する?

 中国がホルムズ海峡防衛で中国海軍の艦艇を派遣しなければ、中国は火事場泥棒だと見なされる。しかも強国アメリカからの派遣要請を拒否したのだから今の平和を否定する現状打破派の立場を示す。これでは中国の立場は世界の悪になる。

 ならば中国が艦艇をホルムズ海峡に派遣すると、“中国はアメリカの覇権下”だと世界に示すことになる。これでは中国の習近平国家主席は面子を潰される立場。このため中国はトランプ大統領から名指しされたことで、いずれの選択をしても地獄が待っている。

正式な派遣要請があれば派遣を

 高市首相はトランプ大統領から海上自衛隊を派遣することを期待されたのだ。私は高市首相に戦前の日本の政治家の過ちを繰り返すなと言いたい。政治家と官僚が国際社会のマナーを知らないから白人世界を怒らせ戦争に至った。敗戦を軍隊のせいにして政治家と官僚は逃げた。戦前の政治家と官僚のように卑怯なことをするな。

 強国から正式に派遣要請があれば海上自衛隊を派遣すれば良い。アメリカと調整して必要な戦力にすれば良いだけのこと。それだけでアメリカから感謝され国際貢献ができる。何故ならホルムズ海峡は海上交通路の要であり世界経済を破壊から守る行為。

 ホルムズ海峡防衛に参加した日本を称賛しても批判する国はない。仮に日本を批判する国があれば現状維持派アメリカに挑む現状打破派の国になる。現状打破派は今の平和を否定する国。結果的に日本を批判した国は世界から孤立し悪の国になる。

 日本国内で海上自衛隊派遣を否定する組織・人物は反日派だ。意図的に日本が世界から嫌われ日本が世界から孤立することを喜ぶ。こうなれば日本の信用回復は難しい。それどころか日本国民が苦しむ立場になるが、これを回避するのは高市首相の決断になる。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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