
イランの核問題を巡る協議が合意に至らないまま、米国とイスラエルは2月28日、対イラン軍事作戦を開始し、イランの最高指導者を殺害した。イランは、ジハード(聖戦)を宣言し、徹底抗戦の構えだ。米国は長期戦に備え追加の空母打撃群を中東に派遣した。(エルサレム森田貴裕)
米国とイランの3回目の核協議が2月26日に行われた。米国はウラン濃縮の完全停止などを求めたが、イランは核の平和利用は認められた権利だと主張。米国側の要求を拒否した。米国のウィトコフ中東担当特使は、米FOXニュースのインタビューで、「トランプ米大統領は、イランに対しミサイル計画の破棄、代理勢力への支援停止、海軍の解体(ホルムズ海峡の航行の自由確保)、ウラン濃縮活動の停止を求めたが、合意に至るのは難しかった」と語った。ウィトコフ氏によると、初回の協議ではイランの交渉担当者が「60%濃縮ウラン460㌔を保有しており、核爆弾11個分の製造能力がある」と誇らしげに語っていたという。
米国とイスラエルは2月28日、イラン各地に大規模な攻撃を開始し、最高指導者アリ・ハメネイ師(86)を殺害した。イランは、米軍基地がある湾岸諸国やイスラエルを標的に弾道ミサイルやドローンで反撃。イランの上級聖職者2人が米国とイスラエルに対するジハードを宣言し、イスラム教徒全員にハメネイ師の血の復讐(ふくしゅう)を呼び掛けた。
イランの国連大使は3月6日、米イスラエルによる攻撃によって、これまでに少なくとも1332人の民間人が死亡したと述べた。イスラエルはイラン攻撃を続ける一方、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを標的とした攻撃も拡大させている。レバノン保健省は6日、イスラエル軍の空爆によって少なくとも217人が死亡したと発表した。
米国は、対イラン軍事作戦に3隻目となる空母ジョージ・H・W・ブッシュを派遣した。イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏によれば、これはイランの降伏以外ではいかなる妥協もしないという明確なメッセージと、長期戦に備えた米国の姿勢を示しているという。7日の報道によると、ミサイル駆逐艦3隻を含む空母打撃群は、10~12日で東地中海に到着すると予想されている。
既に中東海域では、空母エーブラハム・リンカーンと空母ジェラルド・R・フォードが活動しており、イエメンの親イラン武装組織フーシ派とも対峙(たいじ)している。ベンイシャイ氏は、三つの空母打撃群を運用することで、米国は戦力を消耗させることなく、長期にわたる軍事作戦を継続することができると分析する。
報道によると、イラン南部の小学校がミサイル攻撃を受け、女子児童や職員ら175人が死亡したとされる。イラン専門家で国際カウンター・テロリズム政策研究所(ICT)の上級研究員エミリー・ブラウト博士は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、「イラン革命防衛隊(IRGC)が、病院や学校といった通常とは異なる場所に分散していることは、生存戦略の中核を成すものであり、まさにパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの戦略そのものだ」と指摘した。ブラウト氏によれば、現イスラム体制の転覆には、IRGCを粉砕する地上作戦が必要だという。「IRGCは体制の存亡を懸け、市街地で数週間、あるいは数カ月にわたるゲリラ戦を繰り広げるだろう」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は7日のテレビ演説で、イラン国民に対し「イランの解放はあなた方に懸かっている、立ち上がれ」と蜂起を呼び掛けた。対イラン軍事作戦については、「専制的な政権を排除するためだ」と強調。首都テヘラン上空の制空権をほぼ完全に掌握したと説明した。また、ネタニヤフ氏は、「イスラエルとイランが再び友好国となる日も遠くない」と希望を述べた。
トランプ氏は、イランの完全な降伏以外、いかなる妥協も受け入れないとしている。対するイランは、戦闘が現在のペースで進めば、少なくとも6カ月間は激しい攻撃を継続することができると表明し、徹底抗戦の構えを崩していない。
米イスラエルによる対イラン軍事作戦がどれだけ長く続くのか、いまだ不透明だ。






