
終結が見えないイラン情勢
2026年2月28日にアメリカ軍とイスラエル軍によるイラン攻撃が開始された。この時の初期攻撃でイランのイスラム政権と革命防衛隊などの指導者層の大半が排除された。革命防衛隊の戦闘部隊はイスラエルと湾岸諸国に置かれたアメリカ軍基地だけではなく民間施設まで無差別に報復攻撃を行った。
湾岸諸国はイランに反発しイランの暫定政府は湾岸諸国に謝罪し、攻撃しないと発言したが、革命防衛隊は湾岸諸国への攻撃を続けている。さらに革命防衛隊はホルムズ海峡を封鎖したと公言するなど海上交通路が遮断されたことで世界経済への影響が危惧されている。
そんな時にアメリカのトランプ大統領はイランに対して国家に対する無条件降伏を突きつけた。イランの暫定政府は無条件降伏を拒否し、トランプ大統領は交渉を行わない姿勢を見せたことで終結は今も見えていない。
国家に対する無条件降伏復活
アメリカのトランプ大統領は3月6日にイランに対して無条件降伏を要求した。さらにトランプ大統領はイランの降伏後にアメリカと同盟国が「偉大で受け入れられるイランの指導者」を選ぶ方針を示した。
■トランプ氏、イランに無条件降伏要求-エネルギー市場の沈静化目指す
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-03-06/TBHDCNT96OSL00?srnd=jp-international
国家に対する無条件降伏とは何か? それは何時始まったのか? 人類の戦争は軍隊が降伏することはあったが国家が無条件降伏することはなかった。軍隊が降伏しても武装解除するだけで生命は保証された。
国家に対する無条件降伏はアメリカとイギリスの首脳会談カサブランカ会談(1943年1月14から23日)で、アメリカのルーズベルト大統領が人類史上初めて発言した。ルーズベルト大統領は「日本とドイツが無条件降伏するまで戦う」と発言しイギリスのチャーチル首相が同意。後のカイロ宣言(1943年11月22から26日)でアメリカ・イギリス・中華民国(蒋介石)が会談して確認された。
「無条件降伏は国家がするのか? 軍隊がするのか?」
会談では国家が無条件降伏するものと理解され、カサブランカ会談の後からは連合軍(アメリカ・イギリス・ソ連など)の戦闘は“日本・ドイツの民間人である非戦闘員を殺戮することは正義”となった。
この流れで連合軍は「陸戦の法規慣例に関する条約」(1907)や「空戦に関する規則」(当時審議中)に違反してハンブルク・ドレスデン・東京・大阪・名古屋などの都市への爆撃、さらに広島・長崎への原爆投下に至った。国家に対する無条件降伏の目的は“国家の滅亡”(敵国民の如何なる権限も認めない)である。
ポツダム宣言は条件降伏
連合軍は日本とドイツに対して国家に対する無条件降伏を行った。しかし日本陸軍の栗林中将は硫黄島にて日本がアメリカの爆撃に曝される期間を少しでも少なくすることを戦略目標にして持久戦を開始。硫黄島守備隊の栗林閣下と将兵は、アメリカ軍に「5日間で占領する!」と豪語させたが1ヶ月間釘付けにした。さらにアメリカ軍の損害は日本軍の3倍となり衝撃を与えた。
驚いたアメリカはカサブランカ会談における日本への無条件降伏の要求を、条件降伏であるポツダム宣言受諾に切り替え、「国家体制である天皇制の存続を日本国民の選択に任せる」とした。日本は無条件降伏で日本全土が爆撃され国家の滅亡を目的に攻撃されたが、硫黄島の将兵は日本の国家体制を現代に残す功績を行った。
後にアイゼンハワー大統領は「あの宣言(カイロ宣言)によってドイツの指導者は銃剣の林の中に飛び込むか、自殺する以外に選択肢はなくなった。日本軍には特攻しか選択肢がなくなった」(1945.2.28)と皮肉たっぷりに述べた。
反故にされたポツダム宣言(条件降伏)
アメリカは日本軍の苛烈な抵抗に驚いて無条件降伏から条件降伏であるポツダム宣言に切り替えた。だがアメリカによる日本占領が始まるとポツダム宣言は反故にされ無条件降伏に切り替わる。
国家が無条件降伏すれば敗戦国は“行政・立法・司法は占領軍が行う”無権限状態になる。敗戦国日本の行政・立法・司法の全てがGHQ司令官の命令で決定され“命令が法律”になった。そこでは日本の伝統・文化だけではなく人類の戦争観も全て破壊された。この行き着いた先が東京裁判だった。
GHQの最大の失敗は日本の有能な人材をSCAPIN-550で「公職追放」したことだ。日本軍が消されただけではない。日本の政治・経済・軍事から有能な人材が公職追放された後に、三流の人材・共産主義者・無政府主義者などが日本の政治・経済・教育・官僚まで支配した。その結果として、日本政府は日本国民から信頼を失い国家と国民の対立関係を作る。さらに日本国内で反米闘争の土台を作り1980年代まで反米闘争を激化させた。
高市首相が行うこととトランプ大統領に伝えること
日本とドイツは一時的に人類史上初めて“国家の無条件降伏(無権力状態)”になった。さらに反米闘争を激化させる原因になったことを、高市首相はトランプ大統領に伝える必要がある。同時に高市首相はトランプ大統領からホルムズ海峡防衛に自衛隊を派遣する要請を受ければ派遣しなければならない。
何故なら時の強国が軍隊を派遣する要請を行うと、各国は軍隊を派遣するのが国際社会のマナー。これは「自国は火事場泥棒ではない」ことを示す行為。参加した軍隊は直接攻撃作戦に参加するのではなく防御戦闘を行うことが大半。このため日本の自衛隊はホルムズ海峡防衛を行うことになるだろう。
■トランプ氏、イランとの交渉「関心ない」 全指導者排除を示唆
https://jp.reuters.com/world/us/ZTVWURJAJJI3VA55BEVZECYK34-2026-03-08/
【戦争目的】
・全面戦争(All-out war) :交戦国の政権を否定する
・限定戦争(Limited war) :戦争目的が限定されている戦闘と交渉
・制限戦争(Controlled war):政治が軍事に介入する
【戦争の結果】
・全面戦争:勝利者がある戦争(敵国の滅亡)
・限定戦争:勝利者がある戦争(政治の延長としての戦争)
・制限戦争:勝利者なき戦争
トランプ大統領は国家に対する無条件降伏は夢であり革命防衛隊と指導者の排除が目的だと公言。トランプ大統領は感情的になるがキリスト教の運命予定説(カルバン派)で動いている。カルバン派の運命予定説は天国に行くことが決まっている考えだから、アメリカが戦争に勝利することも決まっている考えなのだ。
実際にトランプ大統領はイランの指導者と革命防衛隊の排除を目的としているから全面戦争に該当する。全面戦争は敵国の政権を否定し敵国を滅亡させるまで戦争する。つまり、これは国家に対する無条件降伏を意味している。
トランプ大統領はイランへの初期攻撃の段階では制限戦争だったが、初期攻撃が成功すると戦争目的が全面戦争に移行したことは間違いない。トランプ大統領は国家に対する無条件降伏は夢だと一蹴したが、「ある時点で、『降伏する』と言う者は誰もいなくなるだろう」と言った。トランプ大統領の言葉は完全に国家に対する無条件降伏だから、イラン側も降伏しても排除されることが確定なら誰も降伏しない。
先程も述べたように、アイゼンハワー大統領は「あの宣言(カイロ宣言)によってドイツの指導者は銃剣の林の中に飛び込むか、自殺する以外に選択肢はなくなった。日本軍には特攻しか選択肢がなくなった」と皮肉を言っているではないか。このためイランの指導者と革命防衛隊は苛烈に抵抗することを保証する。
トランプ大統領とアメリカ軍に伝えたい
私は無名だがトランプ大統領とアメリカ軍に国家に対する無条件降伏が反米闘争の原因になることを伝えたい。人類の戦争は軍事力を背景にした外交だから、革命防衛隊を撃破すればイランの指導者は和平交渉に応じる。このため国家に対する無条件降伏を取り下げることだ。
今となってはイラン革命でアメリカに亡命中のクロシュ・レザー・パフラヴィー皇太子がイランで王政復古させるしか選択肢が残されていない。この場合は全面戦争に該当するが、親米路線と中東の安定化を急ぐには必要な選択肢になった。3000年の戦争史を見ると破壊と殺戮が最も少ない最良の勝利は、敵軍を降伏させて敵国指導者を服従させることだ。アメリカが第二次世界大戦で行った敵国に国家の無条件降伏(行政・立法・司法を奪う)を要求することは間違った戦争指導だ。
私はホルムズ海峡防衛に自衛隊を派遣すべきだと主張している。だがトランプ大統領はイランに対して国家に対する無条件降伏を公言した。トランプ大統領はその後に国家に対する無条件降伏を夢だと一蹴したが、「ある時点で降伏を口にするものはいなくなるだろう」と発言した。これは国家に対する無条件降伏だ。
私はこの経緯を知る者としてトランプ大統領から高市首相に自衛隊の派遣要請が来るまで放置すれば良いと考えている。それにイギリスが2隻目の空母を派遣する動きを見せるとトランプ大統領は「既に勝利した戦争に後から加わる国は必要としていない」と拒否した。
ならば日本はトランプ大統領から公式に自衛隊派遣要請があるまで放置で良い。何故なら国家に対する無条件降伏に日本から積極的に参加すべきではないからだ。トランプ大統領が選んだのは政治の延長としての戦争ではない政治の破断だ。
日本の問題はホルムズ海峡封鎖の長期化で国益が失われること。これはトランプ大統領がホルムズ海峡を解放する責任を負うから日本の問題ではない。だが高市首相は法人税・所得税・相続税・贈与税などを廃止する減税政策で物価高騰に対応することが求められる。
日本は消極的な対応になるが、トランプ大統領の方針に従えばいい。日本から積極的に動くと怒られる世界だ。ならば日本はトランプ大統領に合わせれば良い。何故なら責任はトランプ大統領が負うことになるからだ。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)






