トップ国際中東先制攻撃によるハメネイ師排除と日本の対応

先制攻撃によるハメネイ師排除と日本の対応

戦争学研究家 上岡龍次

ハメネイ師暗殺後のイランでの抗議活動(UPI)
ハメネイ師暗殺後のイランでの抗議活動(UPI)

先制攻撃で始まったイランへの攻撃

 アメリカ軍とイスラエル軍共同によるイランへの攻撃は2026年2月28日開始された。アメリカ軍とイスラエル軍共同による初期攻撃でイスラム政権の指導者の大半を排除した。この初期攻撃でハメネイ師を排除したことはイラン側からも肯定され、アメリカとイスラエルの諜報機関の能力の高さを示した。

 アメリカ軍とイスラエル軍の攻撃成功を受けて、アメリカ軍によるイラン攻撃で非協力的だったイギリスは中東防衛に参加することを表明。さらにドイツ・フランスもアメリカ支持に動いた。さらにフランスは空母シャルル・ド・ゴールとその空母打撃群をバルト海から東地中海へ向けて出航させ、イランの脅威に対応する動きを見せた。

イラン攻撃後の掌返し

 アメリカ軍によるイラン攻撃が迫るとヨーロッパ各国はアメリカに対して非協力的だった。さらに湾岸諸国もアメリカに対して非協力的で、立場としてもイランが外交上は優勢だった。このためアメリカはイスラエルと共同でイラン攻撃を開始すると初期攻撃でイランのイスラム政権指導者の大半を排除した。

 初期攻撃でハメネイ師を排除しただけでも驚きなのに、指導者の大半を排除することは諜報機関の能力の高さを宣伝。さらにアメリカ軍とイスラエル軍のミサイルの性能が精密攻撃を行えることも宣伝した。

■ハメネイ師殺害の報復は「正当な権利であり義務」 イラン大統領
https://www.afpbb.com/articles/-/3624411

■湾岸諸国、イランの「卑劣な」報復攻撃を非難 国連安保理の緊急会合で
https://www.afpbb.com/articles/-/3624362

■英軍機が「地域防衛」のため米軍と作戦飛行とスターマー首相、イランによる報復攻撃に対処
https://www.sankei.com/article/20260301-HBFRG7JZQNJSZN3RK6GYEKHD24/

 アメリカ軍とイスラエル軍による先制攻撃を受けたイランのイスラム革命防衛隊は中東のアメリカ軍基地・イスラエル・湾岸諸国への報復攻撃を実行した。だがイスラム革命防衛隊の報復攻撃は攻撃前の外向的優位を消し飛ばした。イスラム革命防衛隊による報復攻撃はアメリカ軍基地に損害を与えないし、イスラエルでも損害は軽微だった。それどころかイスラム革命防衛隊が湾岸諸国に行った報復攻撃は民間人を巻き込む無差別攻撃だった。

 これは致命的で、アメリカ軍とイスラエル軍の攻撃能力は維持されており依然としてイランへの攻撃を維持している。さらに湾岸諸国は国連安保理の緊急会合でイランを共同で批判した。これは湾岸諸国からイランへの間接的な宣戦布告に該当する。

 第二次世界大戦前までは国家が敵国に対して公式に宣戦布告をすることが常だった。だが第二次世界大戦後からは国連が間接的な宣戦布告をする場所に変わっている。実例は湾岸戦争(1990-1991)とイラク戦争(2003- 2011)で、アメリカは国連決議を間接的な宣戦布告に変えて戦争を開始している。

 イスラム革命防衛隊が湾岸諸国に報復攻撃すると湾岸諸国は国連を使いイランに対して間接的に宣戦布告。イギリスはイラン攻撃に反対していたが今ではアメリカ軍に協力的。切り替えの早さはイギリスらしいが、国際社会は強国の論理で動くから強いことが正義。湾岸諸国とイギリス・フランス・ドイツは典型になった。

なぜ軍隊を派遣するのか?

 アメリカ軍とイスラエル軍共同のイランへの攻撃が初期段階で成功すると、湾岸諸国とヨーロッパの外交は掌返し。イギリスは軍隊を用いて中東防衛を即座に開始。イギリスはイランへの攻撃は行わないがカタールを標的としたイスラム革命防衛隊のドローンを撃墜した。これは中東の防衛だがアメリカ軍・イスラエル軍には有益な参加。何故なら防衛に参加するだけでも攻撃に専念できるからだ。

■Visegrád 24

翻訳:英国の台風戦闘機が、カタールを標的としたイランの自爆ドローンを撃墜

■Visegrád 24

(翻訳:フランス空母シャルル・ド・ゴールとその空母打撃群がバルト海を離れ、東地中海へ向けて出航し、地域に対するイランの脅威に対抗します。

 フランスは空母をバルト海から東地中海へ向けた。フランス空母が到着した時には戦争は終わっているかもしれない。だが、これだけでもフランスは外交と軍事でアメリカに対して対等になれる。だからフランスは空母打撃群を東地中海へ向けた。

 今の国際社会のマナーは白人世界のマナー。大雑把に言えば14世紀から19世紀までの白人世界の戦争の経験則と言える。当時の白人世界でA国とB国が戦争した。その時に第三国のC国はA国とB国の戦争を悪用して利益を得た。つまりC国は火事場泥棒をしたと見なされた。

 戦後になるとC国はA国とB国から報復を受ける。すると怒ったC国はA国とB国に報復を行う。この連鎖が当時の白人世界を疲弊させた。白人世界も馬鹿ではない。経験則から時の強国が地域紛争を沈めるために軍隊を投入する。その時に強国が各国に軍隊派遣を要請する。強国から要請を受けた国は軍隊を派遣することがマナーになった。これは軍隊を派遣することで“我が国は火事場泥棒ではない”ことを行動で示すことが目的。

 戦後になると強国から参加した国に外交発言が与えられるから軍隊を派遣する。参加することで火事場泥棒ではないことを証明し戦後は外交発言が得られる。旨味があるからイギリスとフランスは軍隊を派遣した。国際社会は強国の論理で動くから、勝てば官軍負ければ賊軍の世界。ヨーロッパも勝ち馬に乗るために軍隊を派遣している。これが国際社会。

 戦前の日本の政治家と外務省は、この国際社会のマナーを知らないから日本独自路線を進み白人世界を怒らせた。戦争に至ったのは軍隊の暴走ではなく政治家と外務省に責任がある。

 日露戦争でアメリカが和平交渉の仲介を行った。国際社会のマナーでは仲介国には和平の手数料を支払うのがマナー。日本はアメリカの仲介で勝利したのだからアメリカに手数料を支払うはずだった。アメリカは民間人ハリマンを用いて日本政府に打診した。しかし政治家・外務省は間接的なアプローチを知らずハリマン構想を拒否。これでアメリカは怒った。

 さらに第一次世界大戦に日本は連合国側に参加した。しかしイギリス・フランスからの軍隊派遣要請を何度も拒否。日本の拒否理由は“国益にならない”。恐らく連合国側に参加したが軍隊を派遣するだけの国力がない。さらに“ケンカに参加して大事にするよりも見てるだけにすれば大事にならない”との認識だと思われる。これは日本では通用するが国際社会では通用しない。

 イギリスとフランスの執拗な軍隊派遣要請で日本の政治家と外務省は間違った選択をした。当時の太平洋にはドイツの植民地パラオがあった。日本の政治家と外務省から見れば、遠いヨーロッパに軍隊を派遣するよりも目の前の太平洋であれば近い。この国際社会のマナーを知らないことがドイツの植民地パラオを攻撃・占領することに至った。これは国際社会のマナーから見れば火事場泥棒の典型例。戦後になると日本は戦勝国となり、イギリスとフランスからパラオを日本領に提供され大喜び。その時のイギリスとフランスは“日本はパラオを要求した”と誤認した。いや、日本の政治家と外務省が誤認させた。

 このような日本の政治家と外務省による国際社会のマナー違反が繰り返され当時の白人世界を怒らせた。これでアメリカが怒りABCD包囲網を日本に対して行った。日本の政治家と外務省が白人世界を怒らせたとは思わないから悲劇を生んだ。日本はABCD包囲網で追い詰められ日本から戦争を始めたから、日本から見れば白人世界から売られた戦争を買った立場だと今も誤解している。日本は悪いことは何もしていない。それなのに白人世界は日本をイジメたから、やむにやまれず戦争を選んだと今も誤解している。

今の高市首相と外務省は国際社会のマナーを知っているのか?

 戦前の日本の政治家と外務省は国際社会のマナーを知らないから白人世界を怒らせた。日本軍の暴走が原因で戦争に至ったのではない。このことを理解しなければ国際社会に対応できない。ここで問題になるのが高市首相と外務省は国際社会のマナーを知っているのか?

 おそらく水面下でアメリカから高市首相に対して自衛隊を中東に派遣する要請が出ているはずだ。もし高市首相に自衛隊の派遣要請が出ているなら断るな。断れば戦前の再現になる。自衛隊を中東に派遣してもイランへの攻撃が目的ではない。イギリスを見ろ。イギリスはカタール防衛で動いている。

 日本はホルムズ海峡から国益を得ているからホルムズ海峡防衛で動くだけで良い。アメリカから見ると自衛隊がホルムズ海峡防衛で動くだけでも感謝する。戦闘は攻撃と防御がワンセットだから、外国軍が防御を担当するだけでも自国は攻撃に専念できる。だからアメリカは感謝する。

 高市首相と外務省は国際社会のマナーを忘れるな。戦前の日本の政治家と外務省が国際社会のマナーを知らないから白人世界を怒らせ戦争に至ったことを忘れるな。アメリカから要請があれば断るな。なぜイギリスとフランスが軍隊を派遣するか理解すべきだ。自衛隊派遣に反対する者は国際社会のマナーを知らないか、意図的に日本をアメリカの敵にすることが目的だ。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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