
パレスチナ自治区ガザで2年にわたって戦闘を続けてきたイスラエルとイスラム組織ハマスが2025年10月、トランプ米大統領が主導するガザ和平案の第1段階で合意し、停戦となった。イスラエルは合意に基づき、終身刑などに服していた250人を含むパレスチナ人囚人約2000人を釈放した。ハマスは停戦後72時間以内にガザ地区に残るイスラエル人の人質48人全員(生死を問わず)を解放すると約束していたが遅延。約3カ月の間に47人が解放された。
イスラエル軍は現在、ガザ地区の50%を支配している。ガザ地区内のイスラエル軍撤収境界線「イエローライン」付近では、軍部隊の監視下でハマスと赤十字国際委員会(ICRC)による遺体の捜索活動が行われている。最後の人質の遺体がイスラエルに帰還すれば、停戦の第1段階が終了し第2段階へ移行する。ガザ和平案は20項目から成り、第2段階では、ハマスの武装解除、ガザ地区の戦後統治、イスラエル軍の撤収などが含まれている。
ハマスは23年10月7日、イスラエル南部を急襲し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。ハマスの攻撃に対しイスラエルは、軍事作戦を開始。ハマスの壊滅と人質全員の解放を目指し、ガザ地区で地上攻勢を強めた。ハマスは2年間で複数の指導者や軍事部門の幹部の大半を失った。イスラエル軍の攻撃によって、ガザ地区の200万人以上の住民の大部分は避難を強いられた。ハマスが運営するガザ保健省の発表によれば、これまでに7万人以上のパレスチナ人が死亡した。
イスラエルとハマス停戦後の25年10月中旬、米国主導によって、ガザ地区で停戦監視や人道支援の調整を担う「民間軍事調整センター(CMCC)」がイスラエル南部キルヤットガトに設置された。米中央軍司令官と駐イエメン米大使が共同で指揮を執る。当初、約200人の米軍兵士、米政府関係者、イスラエル職員が任務に当たっていた。現在、ガザ地区安定化に向けた取り組みが本格化する中、日本も含めた約20カ国の軍や民間組織、約40の国際機関の関係者が駐留し、現地の調整役として活動の規模を拡大している。
11月中旬には、国連安全保障理事会で米国が提出したトランプ氏主導のガザ和平案を支持する決議案が賛成多数で採択された。決議案には、ガザ地区の治安維持や武装解除を担う「国際安定化部隊(ISF)」や、トランプ氏を中心に据えてガザ地区の戦後統治を監督する「平和評議会」の設置などが盛り込まれた。
ISFへの参加に穏健派アラブ諸国は消極的だ。アラブ首長国連邦(UAE)は、人道支援や復興、実効性のある政府樹立支援に重点を置くとしてISFには参加しないと発表。UAEは、戦後のガザ地区復興へのカタールとトルコの関与が、過激派組織の母体となっているムスリム同胞団やハマスと関係のある組織を強化する可能性があると警告する。
イスラエルのネタニヤフ首相とトランプ氏は12月29日、米南部フロリダ州で会談し、ハマスに2カ月以内の武装解除期限を与えることで合意した。トランプ氏は、ハマスが期限内に武装解除しなければ「地獄の代償を払うことになるだろう」と警告した。
ネタニヤフ氏は会談後、米メディアのインタビューで、停戦第2段階に向けた取り組みについて、ハマスの武装解除拒否が進展の最大の障害となっていると指摘した。イスラエルは、ハマスが武装解除されるまで第2段階に移行しないと主張している。ガザ地区の将来についてネタニヤフ氏は、ハマスを武装解除すれば新たな統治機構の設立は可能だと述べている。
ガザ和平案によると、ガザ地区は一時的に専門家で構成される暫定パレスチナ委員会の統治下に置かれ、その後、改革を実施したパレスチナ自治政府に権限が移譲される。ただ、イスラエルは、自治政府が戦後のガザ地区統治に関与することを拒絶している。ガザ地区の安定化や非武装化、そして復興を成功させるため、イスラエルには米国との緊密な連携はもちろんのこと、自治政府が必要な改革を進める限りにおいて、ガザ地区への自治政府の関与を容認することが求められている。
ガザ地区では、今もハマスが権力を維持し、完全な武装解除に至っておらず、ハマス戦闘員とイスラエル軍との衝突が依然として続いている。ハマスは、独立したパレスチナ国家が樹立されない限り、武装解除には応じないと表明している。ハマスが武器の放棄を拒否し、ISFによる武装解除が実行できない場合、イスラエルがガザ地区で軍事作戦を再開する可能性がある。
(エルサレム森田貴裕)
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