
イスラエルのネタニヤフ首相が、「大イスラエル」構想への支持を表明した。サウジアラビアなどアラブ諸国は強く非難し、パレスチナ国家樹立の権利を尊重するよう求めた。世界の注目がパレスチナ自治区ガザに集まる中、イスラエルは占領地ヨルダン川西岸に大規模なユダヤ人入植地を建設する計画だ。(エルサレム森田貴裕)
ネタニヤフ氏は12日夜に放送された「i24ニュース」のインタビューで、自身は「歴史的、精神的な使命」を負っていると感じており、西岸、ヨルダンやエジプトに属する地域を含む「約束の地」と、大イスラエル構想に深く共感していると語った。約束の地とは、旧約聖書において神がイスラエルの民に与えると約束した土地を指し、大イスラエルとは、現在のヨルダン、レバノン、シリア、エジプト、イラク、サウジの一部を含む。
14日には、イスラエル極右政党党首のスモトリッチ財務相が、国際社会の激しい批判を受けて20年間凍結されていた西岸の「E1」と呼ばれる地区で大規模なユダヤ人入植計画を進めると表明。イスラエル政府は20日、承認した。エルサレム近郊に位置するE1入植地は約12平方㌔の区画で、約3400戸の入植者用住宅の建設を予定している。
西岸での入植活動を監視するイスラエルのNGO「ピース・ナウ」によると、この計画が迅速に進めば、E1入植地のインフラ整備は今後数カ月以内に開始され、住宅建設は約1年以内に開始される可能性があるという。
これを受け、パレスチナ自治政府の外務省は声明で、「これはイスラエルとパレスチナが平和的に共存する2国家解決の実現とパレスチナ国家樹立の可能性を損ない、地理的・人口的な統一性を破壊するものだ」と非難した。また、「E1入植地計画の承認は、パレスチナの将来の国土となる西岸と東エルサレムを分断し、パレスチナ人は武装したユダヤ人入植者の脅威にさらされながらイスラエルの検問所を通って移動しなければならず、真の監獄に変えてしまうものだ」と述べた。西岸のパレスチナ自治区の主要都市ラマラとベツレヘムは22㌔離れている。パレスチナ人が両都市間を移動するにはE1地区を大きく迂回(うかい)し、複数の検問所を通過しなければならず、移動に何時間もかかる。パレスチナ国家が樹立されれば、この地域が両都市間の直接的な結節点となることが期待されていた。
サウジは、ネタニヤフ氏による大イスラエル構想に関する発言を強く非難。国際法に違反し、パレスチナ人の権利を損なうと主張し、世界平和への脅威だと警告した。また、国際社会に対してパレスチナ人へのこの犯罪行為を阻止するための行動を呼び掛けた。イスラエルの承認の有無にかかわらず、西岸への入植はすべて国際法違反と見なされている。
アラブ連盟は、「この入植地計画は、アラブの主権に対する露骨な侵害だ」と非難。2020年にイスラエルと国交正常化したアラブ首長国連邦(UAE)は、外務省の声明で、「これは国際法および国連決議の重大な違反であり、公正かつ包括的な平和の実現と独立したパレスチナ国家の樹立に向けた地域および国際的な努力を損なう」と非難した。ヨルダンのアブドラ国王も、「2国家解決こそが、公正かつ包括的な平和を実現する唯一の道だ」と述べ、計画を一蹴した。
ヨルダン大学教授で政治アナリストのアメル・サバイレフ氏はヨルダン・タイムズ紙で、「イスラエルは、10月7日のハマスによる急襲を受けて、疑いなく安全保障上の境界線を再設定している」と指摘し、必然的に政治的境界線の再設定にも及ぶことになると分析する。サバイレフ氏によると、イスラエルにとって現状では、正常化の問題はもはや優先事項ではなく安全保障が最優先であり、国交正常化したアラブ諸国からの圧力は、現段階ではほとんど効果がないという。
イスラエルが国際社会の非難を押しのけ、入植を進めれば、イスラエルの平和パートナーであるエジプトやヨルダン、国交正常化したアラブ諸国との関係が悪化する可能性があり、サウジとの正常化への希望が絶たれる可能性もある。






