トップ国際中東イスラエル ガザ占領計画を承認 目的はハマス壊滅と人質帰還

イスラエル ガザ占領計画を承認 目的はハマス壊滅と人質帰還

7月10日、パレスチナ自治区ガザとの境界付近に展開するイスラエル軍(AFP時事)
7月10日、パレスチナ自治区ガザとの境界付近に展開するイスラエル軍(AFP時事)

国際社会は非難

イスラエルとイスラム組織ハマスとの停戦交渉が行き詰まる中、イスラエル政府は8日朝、治安閣議で、パレスチナ自治区ガザ全域を占領する方針を承認した。ガザ地区占領計画の第1段階として、北部ガザ市を制圧するという。イスラエルの方針に対し国際的な非難が高まっている。(エルサレム森田貴裕)

イスラエル軍のザミール参謀総長は当初、ハマスが拘束し生存しているとされる20人の人質に危害が及ぶ可能性や、兵士の命を危険にさらすことになるとして、ガザ地区の完全占領に反対していた。治安閣議で閣僚らは、軍の代替案ではガザ地区の残りの地域を包囲するだけでハマスを壊滅できず、人質解放を確保できないとして退けた。約10時間に及んだ閣議の後、ザミール氏は軍の声明で、「われわれは、国家と国民の安全、人質の帰還、そしてハマスの打倒に責任があり、その責務を果たす」と強調。「可能な限り、最善の方法で任務を遂行する」と表明した。イスラエル軍は現時点でガザ地区の約75%を制圧している。占領計画の第1段階が実施されればガザ市の住民約100万人が強制的に南部への避難を迫られることになる。

閣議では、「戦争終結のための5原則」も採択された。戦争終結に向けては、①ハマスの武装解除②人質全員の帰還③ガザ地区の非武装化④イスラエルによるガザ地区の治安管理⑤ハマスでもパレスチナ自治政府でもない文民統治機構の設置―を原則とした。これに先立ちネタニヤフ首相は、「ガザ地区占領の目的は、ハマスの壊滅と人質の帰還であり、イスラエルはガザ地区を併合したり、軍事政権を樹立したりする意図はない」と述べた。また、ハマスが打倒された後は、暫定政権に統治権が移譲されると強調した。

国際社会からは、イスラエルの方針に対し強い非難が相次いだ。ドイツは、強硬な軍事作戦によるガザ市民の苦境に深い懸念を示し、ガザで使用される可能性のあるイスラエル向けの武器の輸出を凍結。トルコは、虐殺政策であり、パレスチナ人を強制移住させるのが目的だと非難。英国は、さらなる流血を招くだけだと批判した。ロシアも、ガザ地区の人道危機を悪化させると指摘し、イスラエルの計画を非難した。一方、イスラエル高官によれば、トランプ米大統領は新たな提案で、ハマスの武装解除とガザ地区の非武装化を含む戦争終結を求めており、主要アラブ諸国にこれらに至るまでの条件を提示するという。

イスラエル軍は現在、ハマスの支配地域を包囲し消耗させつつ、地上や地下にある軍事インフラの解体を続けている。イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏は、今回のイスラエル政府の決定は、ハマス指導部に対し、実質的な交渉に復帰するよう、軍事的、心理的に圧力をかけ、最終的には人質解放と敵対行為停止のための包括的な合意を目指していると分析する。ベンイシャイ氏によれば、イスラエルは初めて、紛争終結に同意する条件と戦後の計画を正式に表明した。表向きはハマスへの最後通告とされているものの、実際には、米国をはじめとする国際社会からの求めに応じた形で、5原則は消極的ではあるが外交への明確な転換を示しており、イスラエルが交渉に前向きであるだけでなく、既に戦争終結に向けたプロセスに着手していることを示しているという。また、イスラエルは今回、ハマスに対しガザ市住民を強制避難させ地上侵攻を行うという暗黙の脅しをかけたのだという。計画通りに進めば、2カ月以内にガザ市住民がハマスの支配から逃れることになる。軍がガザ市制圧を実行した場合、ハマス指導者らは長期間地下施設に閉じ込められる恐れがあり、ハマスは強硬な姿勢を見直し、数週間以内に交渉のテーブルに戻る可能性がある。

人質の家族の多くが、人質解放を確実にする唯一の方法は、ハマスとの交渉による合意だと主張する。ただ、ハマスが交渉に応じたとしても、敵対行為の停止、戦後統治、ハマスの武装解除を含む包括的な合意に至るまでには、数カ月かかるとみられ、人質はこの間も、地下の過酷な環境に耐えながら、苦しみと危険にさらされ続けることになる。

ネタニヤフ氏の戦略が、地域のさらなる不安定化を招くことなくハマスの壊滅と人質の帰還を達成できるかどうかは、依然として不透明だ。

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