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米・イスラエル 核兵器開発を阻止 イラン 核施設に甚大被害

イスラエルのネタニヤフ首相=13日公開の動画より、撮影場所不明(AFP時事)
イスラエルのネタニヤフ首相=13日公開の動画より、撮影場所不明(AFP時事)

ウラン濃縮再開も

イランの核兵器開発を阻止するため、イスラエルがイランへ奇襲攻撃を開始し、米国の参戦でイランのウラン濃縮施設は破壊された。その後のトランプ米大統領の交渉によってイスラエルとイランは停戦に合意し事態は沈静化した。ただ、イランがウラン濃縮を再開する恐れがあり、長期的な核の脅威は排除されていない。(エルサレム森田貴裕)

イスラエル軍は6月13日、イランの核施設などを標的に空爆を開始し、核科学者や軍幹部ら多数を殺害。双方の攻撃の応酬が続いていた。22日には米軍が参戦し、イランの主要核施設3カ所を空爆。これに対しイランは、カタールにある米軍基地に向けてミサイルを発射した。その約5時間後、トランプ米大統領が、イランとイスラエルの停戦合意を発表。24日、12日間に及んだ攻撃の応酬は沈静化した。

元国連核査察官で米シンクタンクの科学国際安全保障研究所(ISIS)のデービッド・オルブライト所長によれば、今回の攻撃で、イランのウラン濃縮プログラムに壊滅的な打撃を与えたという。イラン中部ナタンズの遠心分離機の大半が破壊され、フォルドゥのウラン濃縮施設が甚大な被害を受けた。イラン西部アラクに建設中の研究用重水炉も破壊されたとみられ、核兵器に利用するためのプルトニウムの主要な供給源は消滅した。

イランの山奥の地中深くにあり厳重に警備された核施設であるフォルドゥは、兵器級の高濃縮ウランを生産しているとされ、これまでイスラエルによる空爆での破壊はほぼ不可能と考えられていた。この地下核施設に6月22日、米軍が3万ポンド(約13㌧)の地下貫通型爆弾「バンカーバスター」12発を投下した。

攻撃後の衛星画像には、フォルドゥの山腹に着弾痕とみられる六つの明確な穴が写っており、ISISによると、これらの位置から、地下核施設は深刻な被害を受けたか、破壊されたことがうかがえるという。報告書は、爆弾が遠心分離機室の真上を正確に狙っていたことを強調した。ただ、攻撃前日の衛星画像には、トンネルの外にトラックの車列が写っており、一部のアナリストはイランが高濃縮ウランなどを運び出した可能性を指摘している。

米軍は、1万9000台以上の遠心分離機が設置されているとみられるナタンズとイスファハンの核施設にも、バンカーバスターや巡航ミサイル「トマホーク」で攻撃した。米軍によれば、イスファハンはあまりにも地中深くにあり、爆弾の効果が期待できないと判断し、バンカーバスターは投下しなかったという。イスファハンには、核兵器開発に欠かせない金属ウラン製造や濃縮ウランを再転換する施設があるとされる。

イラン外務省のバガイ報道官は25日、国際原子力機関(IAEA)との協力を停止する方針に関連して行われたテレビインタビューで、核施設の被害についての質問を受け、「イランの核施設はイスラエルと米国の攻撃によって甚大な被害を受けた」と回答した。イランが自国の核施設の被害を公式に認めたのは、今回が初めてだ。ただ、具体的な被害の規模は明らかにしていない。イランはそれまでの間、空爆による核施設の損害は少なく、濃縮ウランを既に他の場所に移転したと主張していた。

イスラエルのネタニヤフ首相は、「われわれは、イランの核計画を阻止した。今後イランで核計画を復活させようとする動きがあれば、イスラエルは同じ決意と武力で行動する」と強調した。イスラエル軍のザミール参謀総長は、「イランの核兵器開発能力を数年遅らせた」と述べている。対外情報機関モサドのバルネア長官も、「かつては想像でのみ可能だと思われていた目標が、今や現実に達成された」と述べた。エルサレム戦略安全保障研究所のクペルワッサー所長は、「イラン主導の枢軸は崩壊し、すべての代理勢力が姿を消した。イランはイスラエルや米国を破壊すると叫んでいるが、それを実現するための手段をもはや持っていない」と強調。「今後、イスラエルは対イランでより早く行動を起こすだろう」と述べた。

イランは準兵器級の高濃縮ウラン408キロを保有しているとされ、IAEAはこれら高濃縮ウランの所在を確認できていない。イランはウラン濃縮活動を数カ月で再開するとの見方もあり、再びイスラエルがイランを攻撃する可能性がある。

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